ライフ

「あくまでも自然な再会が運命的だ」――46歳のバツイチおじさんは灼熱のビーチを4時間近くさまよい続けた〈第34話〉

そこにはガルシアと奇妙なダンスバトルをした長髪長身のヒッピー野郎が立っていた。 奴は目が合うと、俺に向かってタコダンスを踊り、意味ありげにニヤリと笑った。 俺「おう!」 タコ野郎「おう!」 すると、タコ野郎は俺たちの席に座った。 タコ野郎「ハイ、ガルシア! 今日は何やってたの?」 ガルシア「今日はごっつと一緒に瞑想しに行ってたんだよ」 タコ野郎「瞑想か、いいね。それより、また君に会えて嬉しいよ」 ガルシア「ははは」 出たーー! タコ野郎お得意のアピール。 俺を完全無視しての熱いアピールタイムだ。 こいつ、本当にムカつく。なんなんだよ! カーン!(リング音) 『タコ vs 蛇 vs ラテン美女 第2ラウンド』 デート中にもかかわらず、ガルシアを奪い合う俺とタコ野郎の第2ラウンドが唐突に始まった。 タコ野郎は俺を完全無視し、ガルシアを口説き始めた。 英語もガルシアにわかりやすいよう、ゆっくりと伝わるように話している。 タコ野郎「俺、ビールを頼むけど、ガルシアも何か飲む? 奢るよ」 おい! 人の席に割り込んできといて女性に奢るだと? それ、ルール違反だろ!! ガルシア「じゃあ、スクリュードライバー頼むかな~」 いや、ガルシア頼むんかい! このまま置いていかれるとやばい。 俺も何かしゃべりかけねば。 俺「ガルシア、明日も瞑想するの?」 ガルシア「どうしようかなー。あれ、眠いしね~」 俺「確かに。1日二回のヨガと瞑想すると1日が潰れちゃうんだよな~」 タコ野郎「ねぇガルシア、そんなことより乾杯しようぜ」 おい! タコ! 俺の話は! 乾杯のタイミングじゃねぇだろ! タコ野郎「乾杯!」 ガルシア「乾杯~!」 いや、乾杯するんかいガルシア!! 一事が万事こんな調子でタコ野郎は俺を無視し、ガルシアのみに話かけた。 俺も負けじとタコ野郎を無視してガルシアに話しかけた。 俺「ガルシア、お寿司って食べたことある? 日本ではタコのお寿司食べるんだよ」 どうだタコ野郎! 日本じゃあタコを食うんだよ。 タコ野郎「そんなどうでもいい話より、今度カリフォルニアにおいでよ! 太陽と真っ青な海は綺麗だよ」 くそぉ……。 タコ野郎は共同戦線を張る意志などまったくなく、とにかく各々が横入りすることでガルシアの気を引こうとやっきになっていた。 なんなんだこの時間……。 俺は仕方なく会話を続け、タコ野郎と競り合いながらなんとかこの戦場にとどまろうとした。 もちろん深い話などできるわけもなく、告白など夢のまた夢。 そのあいだも、タコ野郎は豊富なボキャブラリーでガルシアを口説き続けている。 俺は防戦一方だった。 こうして、ダンス対決に続く第2ラウンドは、「判定負け」というブザマな結末となり、お開きとなった。

ちょっと酔っ払った糞ヒッピー野郎とガルシア

次のページ right-delta
翌日、今度は自分からガルシアに連絡をする
1
2
3
4
5
6
7
8
9
おすすめ記事