更新日:2023年08月28日 17:29
ライフ

「あくまでも自然な再会が運命的だ」――46歳のバツイチおじさんは灼熱のビーチを4時間近くさまよい続けた〈第34話〉

翌日、今度は俺からガルシアに連絡をしてみた。 俺「ガルシア、今晩もご飯に行かない?」 すると、ガルシアから悲しい返事が返ってきた。 ガルシア「いいよ。実は私、明日チリに帰らなくちゃいけなくて、今晩がラストナイトなの」 えっ、そうなんだ…………。 俺「明日、帰っちゃうの?」 ガルシア「そうなの。だから今晩は盛り上がりましょう」 まじか、あと一週間ぐらいはいると思っていたのに。 バックパッカーの旅は出会いがあり、別れがある。 わかってるつもりでも、やはりお別れはさみしい。 しかもまだ、ガルシアとの関係を完全に作れていない。 気持ちも伝えていない。 蛇拳ダンスを一緒に踊った。一緒に瞑想に行った。タコ野郎と飲みながらガルシアを取り合った。 でも、何も確信めいたものがない。 ガルシアのハートをわし掴みしている手ごたえなどまるでなかった。 「よし、今夜こそ決めるぜ!」 その夜、ガルシアと待ち合わせし、屋上から星空が見える海沿いのシーフードレストランに行った。 ガルシア「素敵なお店ね。ロマンティックだわ。ありがとう、いいお店を見つけてくれて」 俺「今日はガルシアがインドにいられる最終日だからね」 ガルシア「ふふ。ありがとう」 一瞬の沈黙。 ガルシア「星、綺麗だね」 俺「うん。綺麗だね」 俺たちは無言のまま夜空を見上げた。 波音が素敵なBGMを奏でていた。 時折吹いてくる夜風が気持ちよかった。 俺たちは食事をし、お酒を飲んだ。 ガルシアも最終日だからお酒のペースが少し早い。 自分で言うのも何だが、かなりいいムードだ。 ガルシア「あー、少し酔っちゃった」 俺「最終日だしね」 ガルシア「インドに3か月いたけど、今日が最終日か。あー帰りたくない!」 俺「えー、3か月もいたんだ。インド、最高だもんな」 ガルシア「うん。インド最高! 最後の夜だからスペシャルな思い出を作りたいわ」 ん? 何だ? 何だ何だ? スペシャルな思い出って? それって、もしかして…… 俺「スペシャルな思い出ってどういうこと?」 ガルシア「うーーん。なんか盛り上がりたいな」 俺「例えば?」 ガルシア「踊りたいなー。私、踊りたくなっちゃった」 そういえば、俺たちの出会いもダンスパーティー。 チリ人のガルシアは陽気なラテン美女。 サルサのノリ。 タンゴのノリ。 ランバダのノリだ! 俺「俺たちが出会ったイタリアンレストランに行ってみる? あそこなら遅くからダンスパーティーやってるかもよ」 ガルシア「行きたーーーい!」 俺「じゃあ、このお酒飲んだら行こうぜ!」 ガルシア「うん!」 二人で目の前のお酒を一気に飲み干した。 そして、月夜に照らされた海辺に隣接した崖の上の道を歩き、イタリアンレストランに向かった。 レストランを覗くと、まばらのだがダンスフロアで踊っている人がいる。 ガルシアはインドダンスミュージックを聞き、店の前で軽くリズムを踏み出した。 俺「ガルシア、行こうぜ!」 ガルシア「イエーイ!!」
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向き合ってダンスを始めると、また……
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1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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