ジャイアント馬場のギミックから始まった――“巨神”石川修司が辿った茨道【最強レスラー数珠つなぎvol.6】
――プロレスラーになりたいと思ったのはいつ頃ですか。
石川:25歳のときです。プロレスは好きだったんですけど、プロレスを知れば知るほど、あんまり食べられる業界じゃないということに気づいて。やっても苦しいんだろうなというのは分かっていたんですけど、逆に25歳くらいになると、人生のゴールが見えてくるというか。こんな感じで終わるかな、というのが見えるじゃないですか。でもチャレンジしないまま終わるのは嫌だったので、レスラーになろうと思ったんですよね。ただ、そこからあまり苦労しないでデビューしちゃったので、あれ?となって、葛藤や絶望が始まりました。ユニオンプロレスに入って、いろいろな出会いがあってから変わった感じですね。
――プロレスが好きだったのは、子供の頃から?
石川:小学校のときに、おばあちゃんがプロレス大好きだったんです。全日本プロレス中継がゴールデンタイムでやっていたときで、鶴田さんとか長州さんとか天龍さんがバリバリのときですね。中継がなくなったら僕も熱は冷めていたんですけど、高校生のときに、大の三沢ファンの友だちに観せてもらったのが四天王プロレスだったんです。そこからですかね、いろんな団体を観るようになったのは。そのときは全日本が好きで、あとは船木(誠勝)さんが好きでした。強い人に憧れていたので。
――U系にいきたいとは思わなかったんですか。
石川:いきたいというか、いけないと思っていました。選ばれた人たちがやるものだというのがあったんですよ。高校時代、友人から「プロレスラーもオリンピックに出られるらしいよ」と聞いて、「じゃあ、レスラーが出たら全員、金メダル獲っちゃうじゃん」と言ったことがあるんです。いま思えば、アマレスのルールの中だったらアマレスをやっている人のほうが強いと思いますけど、そのときはプロレス界って人間のレベルじゃない人たちの集まりだと思っていたので、まさか自分がやれるとは思っていなかったです。柔道部の先輩だった佐々木貴さんがプロレスをやっていると知ってから、僕にもできるかも知れないと思い始めました。
――フィニッシュホールドを「スプラッシュマウンテン」にしたのはなぜですか。
石川:ゲームが好きなんですけど、バーチャファイターという格闘技ゲームのジェフリーっていうキャラクターのフィニッシュホールドが、スプラッシュマウンテンだったんです。ダイナマイト関西さんが使っているのは知っていたんですけど、関西さんというよりは、どちらかと言うとジェフリーです(笑)。
――そもそも、フィニッシュホールドとはどうやって決めるものなんでしょうか。
石川:自分が持っている技で、一番インパクトのある技にするというのがまずあります。一番ショボい技をフィニッシュにしてもしょうがないですから。あとは僕の場合、身長を考えたときに高いところから落としたほうがダメージがあるというのと、あと単純に投げ方がカッコよかったからですね。
――元々、パワーボムが得意だったとか?
石川:全然得意じゃなかったです。なので、使おうとは思っていなかったんですけど、使い始めてからいまの自分のスタイルに近づいてきました。馬場さんのギミックから脱却するためにいろんな技に変更していって、最終的にスプラッシュマウンテンを使い出してから変わった感じですね。

尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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