ジャイアント馬場のギミックから始まった――“巨神”石川修司が辿った茨道【最強レスラー数珠つなぎvol.6】
――今後の目標は?
石川:まだ戦っていない選手と戦いたいというのと、タイトルにはずっと挑戦していきたいです。獲ったことのないタイトルも欲しいですね。あとは町田に住んでいるので、町田で自主興行をしたいと思っています。
――何歳までプロレスをやりたいですか。
石川:本当は40歳くらいだと思っていたんですよ。でも過ぎちゃったので(笑)。プロレスって麻薬じゃないですけど、一回リングに上がっちゃうと、なかなか辞められないというか。理想は一番いい状態で衰える前に辞めるのがカッコいいと思うんですけど、たぶん辞めた後、とてつもない後悔が襲ってくると思います。この前、金村(キンタロー)さんの引退興行を観ていて、ボロボロになって辞めるのが一番いいのかなと思ったりしました。ただ、僕は引退興行は絶対しないでおこうと思っています。スーッと黙って去りたいなと。
――最後に、この連載のコンセプトである、「強さとはなにか」を教えていただけますか。
石川:一般の人に舐められない最低限の強さは持っていないといけないと思うんですけど、それ以上になると、「すごい」っていうんですかね。強さよりも、すごいことがプロレスの強さだと思います。デスマッチでも、他の人ができないような戦いをしている人はすごいですし、バラモン兄弟のように破天荒だったり、(ザ・グレート・)サスケさんみたいに何を考えているのか分からない人もすごい。常人が真似できない「すげえな」というのを見せられることが、強さなのかなと思います。レスラーとしてみんなベクトルはバラバラなんですけど、僕はその中で、「死んじゃうんじゃねえか」という戦いを見せたい。そういう意味での強さを見せたいなと思います。
――ありがとうございました。では、次の選手を指名していただけますか。
石川:鈴木秀樹選手を。いま大日本をメインにしているフリーの選手です。ビル・ロビンソン先生からキャッチ・アズ・キャッチ・キャンを教わっていたり、僕とは違って確かな技術を持っています。体格も190cmで110kgくらい。理論もしっかりしていて、昔のプロレスをちゃんと持っているというか。正しいレスリングを持っているという意味で、最強かなと思います。
強さとはなにか。それはまだ私には分からない。しかし今回のインタビューを終えて、一つ確信したことがある。それは、「強い人は、いい人」。石川修司から滲み出る凄まじい“いい人”オーラから、これまでインタビューしてきた6人の最強レスラーに共通しているのは、いい人であることだと気づいた。強さへの自信が、人を優しく大らかにするのかも知れない。強さとはなにか。プロレスとはなにか。うっすらとではあるが、見えてきた気がする。
取材・文/尾崎ムギ子 撮影/安井信介

尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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