90年の歴史で初!将棋連盟理事解任騒動を田丸九段が振り返る
なぜ、予想外の結果が出たのだろうか? 田丸九段が振り返る。
「将棋界の今後に対して危機感を募らせている棋士が多かったというのが、投票結果を左右した最大の原因であることは間違いありません。ただ、票読みをして感じたのは、タテの関係よりも、ヨコの関係を大事にする棋士が増えていることでした。つまり、師匠や兄弟子など一門で意思を統一するよりも、同期や勉強会、はては趣味の集まりなどからできた人間関係で投票行動を決めていた棋士も多かったのです。だから、若手も多くの棋士が解任に賛成票を投じた。そのような棋士の繋がりの変化は一因になったと感じています」
6月には理事が改選となるため、将棋連盟は新たな理事を補充せずに当面の運営を続ける予定だ。
「常務会にも外部の有識者や女流棋士の枠を設けるなどして、二度と同じような事件が起こらないよう体制を整える必要がある」
田丸九段はこう話しながら、最後に長いプロ棋士生活を振り返った。
「今回の解任騒動はおそらく、昭和27年(1952年)の陣屋事件(神奈川県の鶴巻温泉の陣屋旅館で行われる予定だった王将戦で升田幸三八段〈当時〉が旅館のベルを押しても関係者が迎えに来なかったために対局をボイコット)、昭和10年(1935年)の旧将棋連盟分裂事件(当時の神田辰之助七段の八段昇進に反発する声があがったため、昇段賛成派が連盟を脱退。翌年再統一)、将棋会館の建て替えを巡って常務会が総辞職した昭和49年の分裂騒動などと並んで、後世に語り継がれてしまう事件でしょう。そのようなトラブルが発生するたびに、連盟の総会は紛糾したものです。
元来、棋士は議論好き。今回の臨時総会も4時間にものぼりましたが、過去には明け方4時まで議論し続けたこともありました。ただ、議論が長引くと、昔は年配のある棋士が『そろそろ、カニじゃない?』とか言い出したのです。“カニ”というにはお金の隠語。昔は、棋士に支払われる20~30万円の協力金が手渡しだったので、議論が白熱すると、そろそろカニを受け取って収拾させましょうとなったわけです(笑)。当然、今は振り込みですからそんなことはありませんが、いつか今回の騒動もそんな笑い話として話せるようになればいいですね」
対局のみならず、議論を戦わせながら、将棋界を盛り上げる棋士たち――そんな時代が再び訪れることを期待したい。 <取材・文/池垣完(本誌)>
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