「埼京線の先頭車両で触ってください」痴漢プレイ待ち合わせ掲示板の書き込みを追う
・敗者復活戦は池袋駅で…
埼京線の先頭車両は特に混雑する。電車が到着すると、駅員がこう叫んだ。
「1号車は大変込み合うので別の車両をご利用くださーい!」
しかしそんなアナウンスを彼らが聞くわけもない。ほかの乗客、駆け込み乗車の人々と痴漢がもみくちゃになりながら狭い車内へと押し込まれていった。女装子の真後ろのポジションを確保したのは、ホームの時点で密着していた男。人ごみに紛れて見えないものの、男の体が上下にゆっくりと回転するように動いていることから、自分の性器を女装子の体に押し付けているのは明白だ。
発車して30秒、すでにまわりの乗客は目を丸くして驚いている。しかしそんなことはお構いなしに、女装子の正面に立った土方ふうの中年男性が、女装子の股間をまさぐりまくっていた……。
一方で、ポジションを逃した他の取り巻きたちはその様子を人ゴミの隙間から強引に覗き込む。中尾彬ふうの女装高生はその光景を羨ましそうに眺めていた。それはさておき、彼らにもまだチャンスはある。池袋駅で電車は停車し、乗降者の入れ替えがあるのだ。
池袋駅に到着し、ドアが開くと女装子はスカートを直しながらいったん外へ出た。降りる乗客の人数からして、外に出る必要性はないようにも思えたが、気持ちをリセットすることで、またイチから痴漢プレイを楽しもうとしているように見える。
取り巻きの動きを観察してみる。後ろを付けて下車する者もいれば、先ほどまで女装子がいた場所にあらかじめ移動して待ち構えている者もいる。しかし不運なことに女装子はさっきまでとは場所を変え、ドア付近の角へ一直線に向かった。またもやポジションを逃した男たちはなんとも言えない表情で人ゴミに押し潰されてゆく……。彼らにもうチャンスはない。板橋駅・十条駅は下車する乗客がほとんどいないため、車内の状況が変わることはもうないのだ。そして女装高生はといえば、誰にも相手にされることなく、ただただ、まわりからいぶかしげな視線を浴びているだけだった。
赤羽駅に到着すると、女装子は電車を降り、向かいのホームの新宿行きに乗車した。もちろん取り巻きの男たちもコバンザメのように並走して同じ車両に移る。空いた車内で女装子を視姦しながら、新宿駅で再び乗り換え、途中参戦の男たちも加えつつ、2回戦が始まるのだろう。書き込みを見る限りでは、この後4回戦まで続くらしい……。
さすがに筆者は見飽きてしまったので、ここで追跡を終えた。だが、もしも埼京線で女装子を見かけたら、この話を思い出してほしい。日常では味わえない、ちょっとした人間ドラマを垣間見ることができるかもしれない。
<取材・文/國友公司>元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
痴漢プレイは4回戦まで続く…
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