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東京都庁の七不思議!? 新宿の路上に並ぶ雑誌やビニール袋の意味とは…

無料でカレーが食べられる?

 翌日、再びふれあい通りを訪れると、そこには100人近いおじさんたち(ときどきお兄さん)がたむろしていた。都庁入口の階段にもびっしりと人が座っている。
路上の雑誌

ふれあい通りには100人以上の行列が……

 並べられた雑誌も倍くらいに増えており、通りがかったサラリーマンや外国人観光客はいぶかしげにその光景を眺めていた。人の良さそうなおじさんに炊き出しの時間を聞いてみると、17時からだという。あと1時間以上もあるので、軽い世間話に付き合ってもらった。 「兄ちゃんもカレー食べたいなら、なにか荷物を並べておいた方がいいぞ!」  どうやら、この雑誌の列は“カレーの順番取り”のためらしい。炊き出しが始まる時間になると、自分の荷物が置いてあるところに並ぶことができるというわけだ。列をよく見てみると、中には丸まったビニール袋や帽子などもあったりして、必ずしも雑誌である必要はないようだ。
路上の雑誌

炊き出しで一杯やっている人たち

 とはいえ、雑誌ならまだしも、丸まったビニール袋なんかで果たして順番を取れるのだろうか。「このビニール袋は俺のだよ」と言われればそれまで。下手したら殴り合いの喧嘩も起きてしまいそうだが。 「いや、喧嘩にはならねえな。荷物を並べなくても1回はカレーを受け取れるぞ。荷物を並べている奴は2回目も受け取るためにやっている。先頭の方は3回目も狙っているんだな」  だれでも最低1回はカレーを受け取ることができるので、必死こいて順番を取る人間はあまりいないらしい。混雑を避けるために、自然と順番を取るようになったそうだ。確かに周りに座っている人たちを見てみると、ホームレスらしき人はいるものの、それと同じくらい一般人も混じっているように思える。20歳そこそこの若い人や、仕事帰りの職人さん、なかにはビジュアル系の服を着たバンドマンらしき人までいる。どうやら、この炊き出しはホームレスでなくても食べることができるようだ。 「おいおい、俺だってホームレスじゃないからな。都内の一軒家で1人暮らししているぞ。冷蔵庫は3台、炊飯器は15万の高級品、洗濯機は……」  どこまで本当かは分からないが、ホームレスでないのは事実のようだ。でもそんなに金持っているのなら、あんたの分のカレー、ホームレスに分けてあげればいいのに……。 「金には困っていないから俺が来るのは3か月に1回くらいだな。俺にはホームレスの友達がいっぱいいるから、みんなでカレー食べながらお互いに生存確認をしているんだよ」  一般人が炊き出しに並んでいたら、ホームレスの方々から白い目で見られそうなものだが、どうやらふれあい通りに関してはその心配はないようだ。ということで、このおじさんにならって筆者も列に並んでみることに。前に並んでいた2人組の男性も、工事帰りの職人さん。タダでカレーが食べられると聞いて試しに来てみたという。
路上の雑誌

受け取りの様子

 炊き出しはカレーと炊き込みご飯からひとつ選ぶことができ、麦茶がセットで付いてくる。受け取ったカレーのふたを開けると、夏らしく大きくカットされた野菜がゴロゴロ。ホームレスの方々と一緒にカレーを頬張ると、心なしかいつもより美味しい食事に感じられた。  みなさまもこの列に並んでカレーを食べてみれば、忘れかけていた食べ物のありがたみを感じることができるかも知れない。
カレー

配られたカレー。無料とは思えないほど美味い!

<取材・撮影・文/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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