苗場スキー場復活のカギは、日本一高い(標高1800m)ライブだった
「バブルの遺産」と揶揄されることもあった苗場スキー場(新潟県湯沢町)が、ここにきて活気を取り戻しつつある――。
円安効果は言うまでもなく、32度の最大傾斜を誇るパウダーフィールド、老朽化は否めないものの、バブルな雰囲気を「割安」な料金で満喫できるホテル・サービスなどもうけ、近年、外国人観光客が急増。“お膝下”の苗場プリンスホテルでは、今年に入ってからの外国人観光客の割合が5人に1人に迫る勢いになっているという。
1987年公開の映画『私をスキーに連れてって』の爆発的ヒットをきっかけに、ピーク時には年間380万の来場者数を誇っていた苗場スキー場だが、バブル崩壊後はスキー人口が激減。当時、1万5000戸も乱立されたリゾートマンションは長らく値崩れに歯止めがかからない状況だったが、自治体を巻き込んだ「インバウンド(訪日外国人)需要」の取り込み戦略が功を奏し、最近では外国人が買い漁っているといった話も聞くようになった。
ただ、老舗復活のキーワードは、何も「外国人観光客の誘致」といった単純な話だけではないようだ。実は、苗場スキー場ではいつくのも新たな試みをおこなっている。苗場をホーム・ゲレンデと自負するスキーファンが話す。
「20代の頃に苗場で遊んでいたバブル世代のパパ・ママが、20年ぶりにファミリーで来ました……といった例は多いですよ。花火イベントもあるし『かまくら体験』もできるんで、今の苗場は、昔と違って子供連れでも楽しめる総合エンターテインメント・リゾートに様変わりした。確かに、外国人観光客が増えたということもあって、マナーを守らない客も目につくようになったけど、今シーズンからは英語や中国語の話せる“外国人コンシェルジュ”も配置されるようになったので、トラブルも少なくなった印象ですし。ただ、長年苗場に来ているので、盛り上がるのは嬉しい反面、1990年代みたいにリフト2~3時間待ちとかそうなるのは嫌ですけどね(笑)」
なかでも、ユニークな取り組みのひとつとして挙げられるのが、ゲレンデシーンに音楽などのエンターテインメントを取り入れる手法だ。昨年12月、苗場スキー場のプリンス第1ゴンドラ山頂駅にオープンした「ライブカフェ『天空』」は、週末の苗場を盛り上げようと、クールでパンキッシュなライブ・イベントを開催。これまで、175RのSHOGOやバブルガムのBro.KORNなどスゴ腕のアーティストも招聘するなど、標高1800mに鎮座する日本一高いライブスペースで人気DJらの生演奏を満喫できる場となっている。都内から「天空」で催されるイベントにDJとして参加しているDJ★Kohsuke氏が話す。
「普通に山頂にある山小屋だと思って入ってくる人の中には、ここがライブスペースになっているのを見てけっこう驚く人も多いですよ。小屋の中が熱気で溢れているのに、窓の外は一面の銀世界ですしね(笑)。ジャンルもヒップホップあり、R&Bありの“オールジャンル”だし、東京からやってくるDJと地元で回しているDJが、毎週末に日替わりで集まってくるんで、音楽好きには堪らないジャンクな雰囲気のハコになっている」
もちろん、「日本一高いライブスペース」を謳っているだけあり、売りは音楽だけではない。同じく、都内のクラブを拠点に「天空」のイベントでもハイ・パフォーマンスを見せるDJ58(ゴンパチ)氏が続ける。
「1月からは『夜ゴン(夜間運行のゴンドラ)』が始まったので、山頂までの道のりもライトアップされた幻想的なゲレンデ・クルージングが楽しめますよ。不定期だけど、音楽の枠を超えた大物アーティストを呼ぶようなスペシャルライブもあるし、『標高1800m』と聞くと辿り着くのに骨が折れそうに感じるかもしれませんが、ウインターシーズンの山頂ライブ、絶対オススメですよ!」
1980年代には“ユーミン”の聖地と呼ばれ、1990年代後半には日本最大級の野外音楽イベント「フジロック・フェスティバル」を引っ張ってきた苗場ならではのコンセプト・ライブスペースと言えるが、来る2月14日のバレンタインデーには、昨年日本中を席巻した日本エレキテル連合が緊急参戦するという。まさに、何でもアリ! のこのストロング・スタイルに、「苗場復活」の息吹を感じさせられるのではないか。 <取材・文・撮影/日刊SPA!取材班>
●ライブカフェ「天空」ライブ情報
http://www.princehotels.co.jp/page.jsp?id=118662
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