渡辺浩弐の日々是コージ中
第130回
03年9月2日「11年ぶり」
・おなじみ高橋名人が『天外魔境II』(1992年作品)PS2バージョンのサンプルを送ってきてくれた。さっそくプレイ。
・戦闘時の操作系やマップのビジュアル表現にはきちんと新しい技術を導入して作り直してある。が、シナリオと、そして音楽や声、アニメ映像についてはほとんど手を入れていない。往年のプレイヤーにはとても懐かしいはずだ。
・懐かしさをちゃんと感じつつ愉しめる、ということは名作の証でもある。遊び終わって10年以上経過してもドラマの筋立てを覚えているRPGなんて、珍しい。それどころか、3日も間が空くと自分が何をやってたか思い出せなくなり、つい放り出したくなるゲームが多いのである。
03年9月3日「もう正月映画の試写だ」
・『コール』試写。男女3人が一家族3人(父・母・娘)を同時に誘拐する。犯人達は3箇所に分かれ、携帯電話で30分ごとに連絡を取り合いながら、別々に行動する。という設定が巧い。さらに娘は重いぜんそく持ちで、発作を止める薬がなければ死に至る可能性があった。
・ケータイのおかげでミステリーは新しい段階に進んでいる。テレビ電話化したらもっと面白くなっていくだろう。ただし、この領域はハードもユーザー意識もだんぜん日本の方が進んでいるのだ。がんばらなくては。あ自分も。
03年9月4日「マナーとは」
・そういえば『コール』の設定をそのまま使って劇場用の携帯電話マナーCMが作られていて、笑った。
・ところで最近、電車内でケータイマナーを叱るアナウンスが非常にかまびすしくなっている。ケータイでぺらぺら喋ってる奴はうっとうしいとは思うが、他人があれこれ言うのもどうかと思う。それを言うなら人と人が会話してる方が2倍うるさいのだ。
・そういう人達はほっといてもそのうち、いなくなると思う。今ウォークマンをして歩いてる人ってほとんど見かけないでしょ。電車の中でまで電話をしなくてはならない必要性なんてないはずだし、それはつまりかっこ悪いことだということにみんな気付くはずだ。
03年9月5日「新刊出ます!」
・お手伝いしてる木ノ花さくや先生の『エンカウンター』第3巻がいよいよ完成! 今日から挨拶回り。まずはオンライン書店のbk-1に行った。本屋で切れててもネット書店で買ってもらえるのは、非常に嬉しい。前回と同様に、アマゾンとbk-1では切らさないようにしてもらえそう。
・ところで『ファウスト』のことがここでも話題になっていた。講談社の名物編集者・太田克史さんが仕掛けた新文芸雑誌だ。作家の顔ぶれも、デザインも、企画も、野心的でありつつ隙がない、かっこいい本だよ。オンラインではbk-1独占販売らしい。
・ちなみの『ファウスト』第1号の中に、僕の部屋を使って撮られた写真が数点、使われている。ウチの屋上で撮られたものも。『エンカウンター』第3巻と見比べると面白いことがわかるかもしれないよ。
第129回
03年8月25日「まだまだ」
・「ブロードバンドコンテンツ(中略)支援事業」公募プロジェクト審査会、続いている。
・今年の傾向をもう一つ挙げると、マンガ・アニメ・ゲーム関係の応募が多くなっていること。自分が結構こだわってるテーマなので、遂に時機が来たのかと嬉しい反面、点数が辛くなってしまったりしないように注意する。マニアックなコンテンツをどう作り、どうネットに載せ、どう課金していくか、真剣に考えるとこれはかなり難しい。
03年8月27日「新宿中央公園が国際観光名所になる?」
・『パーフェクトブルー』『千年女優』の今敏監督の新作アニメ『東京ゴッドファーザーズ』試写。おかま、おやじ、コギャルのホームレス3人組が、クリスマスの夜に拾った赤ん坊を抱えて東京の街を東奔西走する。
・家出した女子高生がそのまま生きて行けちゃう、そんな東京のポップな状況をうまく描写している。ホームレスだけでなく同性愛者、やくざ、不法滞在外人、精神病者、猫おばさん、等々、豊かな都市のマイノリティーにとても暖かい光を当てている。『逆噴射家族』や『タンポポ』みたいに、フリーキーな国ニッポンの半ドキュメンタリーとして欧米に受けそう。
・実写でも撮れる映画ではあるが、ただ実写でやると、この国では一流品にならないと断言できてしまうことが悲しい。カメラを回せば撮れてしまう現在東京の風景をいちいち緻密にリアルに描き起こしていくのはかなりマゾヒスティックな作業だったと思う。
・さて試写会場でデジタルハリウッドの杉山校長にばったり会った……と今日記データベースに入力していたら、この人と前にあったのはきっちり1年前の今日(8/27)だったという記録が出てきた。前回は高円寺阿波踊りの会場。
03年8月28日「ポスト・バブルの戦略」
・『バブルガムクライシス』シリーズ久々の新作が劇場用アニメーション『パラサイトドールズ』として完成したと聞き、さっそく試写に。”ブーマ”と呼ばれる人造人間が引き起こす犯罪に対応するA.D.POLICEの活躍を描く。今回は、そのブーマが次々と惨殺されていく事件の謎を追う。
・このシリーズが生まれた土壌は80年代のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)文化である。『ブレードランナー』など欧米のカルトSFに影響を受けつつ、マンガ文化の延長に成立したものである。一本1万円以上していたビデオソフト市場が、今よりずっとマニアックだったオタク層によって支えられていたのだ。
・国際的競争力のあるコンテンツとしてアニメが再発見されている今、その一部分が、こういった形で再プロデュースされている状況は嬉しい。ただ、後が続かずに消えてしまったもの、DVD化すらされていないものの中にも、秀作は多いのだ。最近それを血眼になって調査しているのは日本の映画やアニメ関係者でなく、ハリウッドのプロデューサーだと聞く。
第128回
03年8月18日「ブロードその1」
・中野ブロードウェイに早朝から行列ができていた。『アド街ック天国』で紹介されたせいか。いや違う。昨日までやってたコミケの流れだ。明らかに上京してきて3日間野宿した後と思われる若者達が万単位で買い物しまくってる、異様な光景をそこかしこで見かけた。
・さて当ビルにおいでになった方は、明屋書店のレジカウンターを、注意してみて下さい。某有名マンガ家さんの直筆かきおろし四コママンガが貼ってある。へぇ。
・そういえばまんだらけの古川社長が中野ブロードウェイの理事になってた。へぇへえ。
03年8月20日「対決モノで対決」
・堤幸彦監督『2LDK』と北村龍平監督『荒神』の試写。「密室ファイトもの」というしばりで競作・同時上映という企画である。
・『2LDK』は、同じタレント事務所に所属し2LDKのマンションで共同生活しているB級タレント2人(野波麻帆、小池栄子)の巨乳対決。フェティッシュな演出がいい。萌えポイントは小池栄子の指の太さ。
・『荒神』は最初「ジジイ2人のマトリックス」という企画だったらしいが、北村監督の意向で若い俳優になっていた(大沢たかお、加藤雅也)。ジジイでやったらもっともっとかっこよかっただろうに。
・こういう企画は作家性を少し押さえてでもコンセプトを全うするべきだと思う。ファンサービスは結局作り手のためにもなるのだ。
03年8月21日「ブロードその2」
・日本はいきなりブロードバンド大国になった。インフラが出来て、アイデアが足りない状況。だからこそ、お金なくても知恵さえ絞ればすごいことができるかもしれない。・というわけで経産省絡みの「ブロードバンドコンテンツ(中略)支援事業」公募プロジェクトの本審査会。提案者からそれぞれの企画についてプレゼンテーションを受ける。
・具体的には書けないが、「動画対応携帯電話の意外な活用方法」「ゲーム機を端末に想定した配信コンテンツ企画」「ブロードバンドならではの通販番組ビジネスモデル」……複数の提案があったものはこんな感じ。携帯電話絡みの企画がとても多くて驚いた。