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点滴に筋弛緩剤を混入した仙台の事件とも酷似… 大口病院「点滴殺人」の謎【大量殺人事件の系譜】

 地域に根ざし、高齢者を対象とした医療機関として、終末期の患者を積極的にケアしてきた大口病院。地元での評判もいい。だが、ミステリー小説のような今回の出来事に、病院内部の疑惑も浮かび上がる。高橋院長は苦しい胸の内をこう明かす。 「内部の人を信じたいんですが、そういうこと言ってる場合じゃありませんからね。内部(犯行)の可能性も否定できません」  薬物や毒物など、異物などを混入させた殺人事件は、これまでも発生している。2000年に仙台市のクリニックで、患者の点滴に筋弛緩剤が混入された「筋弛緩剤点滴事件」が起きた。1件の殺人と4件の殺人未遂の罪で、クリニックに勤務していた准看護師が逮捕され、無期懲役が確定した。裁判で被告は一貫して無罪を主張、現在、再審請求中。  夏祭りのカレーにヒ素が混入された「和歌山カレー事件」(1998年)では、カレーを食べた4人が死亡した。確たる物証がないまま近くの主婦が逮捕されたが、死刑が確定。やはり再審を請求している。ほかにも、トリカブト保険金殺人事件(1986年)、本庄保険金殺人事件(1998年)、名張毒ぶどう酒事件(1961年)、帝銀事件(1948年)などがある。  これらの事件では、毒物が犯行に用いられた。劇薬や麻薬などの管理は、施錠するなどが義務づけられているが、今回の事件の界面活性剤が含まれる消毒液などは、無施錠でどこにでも置いてあるという。  複数の患者を狙った無差別の大量殺人の可能性が大きくなった今回の事件。事件が発覚しなければ、被害はさらに拡大していたことも考えられる。犯人の狙いは何だったのか。なぜ命を奪わなければならなかったのか。  まだ謎多きこの事件、真相解明が待たれる。 <取材・文/青柳雄介>
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