恋愛・結婚

愛人にキャットファイトをさせるオジサンの真意――鈴木涼美の「おじさんメモリアル」

「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは自らを饒舌に語るのか』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)などの著作で「性を商品化する」女性たちの内面を活写し注目されている文筆家の鈴木涼美が、「おじさん」をテーマに日刊SPA!で連載する「おじさんメモリアル」第18回!

【第18回 その男、凶暴な女がお好きにつき】

 大企業というのはそれなりに入る価値があると私は思う。いい意味で、圧倒的な日常の安定感があるのだ。別に福利厚生がどうとか年金制度がどうとかそんなみみっちい話ではなく、いやもちろんそういうこと混みで生み出されてるのかもしれないけれど、大きな天災やレジーム・チェンジや大事件が起きても、ライフ・ゴーズ・オン的な感覚と言いますか。だからうっかり危機感のない殿様経営しちゃって会社潰しかけちゃった社長さんとか、終身雇用に甘んじてぼんやりしてたら定年迎えてすぐ病気でたおれちゃうサラリーマンとか、気持ちがちょっと分かる。

 首相が辞任すれば休み返上、北朝鮮が不穏な動きを見せれば号外配り、台風が来たら飲み会欠席、靖国参拝で紙面の作り直し、なんていう日々を送っていた新聞記者時代の私でも例外ではない。入社してすぐに政権交代、三年目に大震災、結構いろいろあったとは思うが、民主党が失脚しても原発が再稼働しても、それは業務的なイレギュラーであって明日の紙面への不安は常にあっても、私自身の明日への不安ではない。そういう感覚で生きていた。

 で、それはものすごく幸運なことではあるものの、ドキドキすることやめられないタイプのお嬢さん的には当然、ヒリヒリしたスリルには欠ける。いや、全国紙に毎日書いた文字を載せるなんていうことは本当はギャンブルや夜遊びなんかよりずっと刺激的なことではあるはずなのだけど、それがその大きな企業の構築の中にあるのでヒリヒリがない、と錯覚してしまうのだ。ということで、自民党政権が復活したあたりでそのストレスが絶頂に達した私は、間違ったヒリヒリを求めてなんだかすごく間違った場所に迷い込んだ。

⇒この続きは連載をまとめた単行本「おじさんメモリアル」で

【鈴木涼美(すずき・すずみ)】
83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動。幻冬舎plusにて「愛と子宮が混乱中 夜のオネエサンの母娘論」を連載中。LINEブログは http://lineblog.me/suzukisuzumi/

(撮影/福本邦洋 イラスト/ただりえこ)

おじさんメモリアル

著者が出会った哀しき男たちの欲望とニッポンの20年
日刊SPA!の連載を単行本化


「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか

慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。本書がデビュー作。

身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論

「お乳は生きるための筋肉」と語る夜のおねえさんの超恋愛論




おすすめ記事