更新日:2022年08月21日 12:25
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ホコリ、カビ、ダニだらけの布団に寝かされる自衛隊の演習訓練

 無論、そういうものにはたいていダニやノミなどがいて、虎視眈々と人間の血を吸えるチャンスを待っているわけです。 「できるだけマットレスが体に触れないように、寝袋から体を出さずに眠ろうとしても、夜中になると体が真っ赤に腫れていることがある。ダニなのか、ノミなのか、何が原因なのかはわからないけれど、そうなるともうかゆくて眠れない」と自衛官G氏の奥様は演習訓練から帰ってきた夫の言葉を思い出しました。 「せめて10年に一回くらいは毛布やマットは買い替えてほしいものですが、それは贅沢なことでしょうか? もし布団を干したり洗ったりできないというなら、訓練用にレンタル寝具を借りられるようにしたらいいのに、そんな贅沢は自衛隊には許されないということですか? 民間会社の社員研修でダニやノミだらけの布団で泊まれといったらどうなるか……普通に考えてみてほしいです」とG氏の奥様。 「同じ人間なのに、どうして、自衛官だけはダニやホコリ、カビまみれの布団で寝かせてもいいと考えるのかしら?」と悔しそうに言った後 、彼女の表情が少し柔らかくなりました。 「でも、演習訓練はつらいことばかりじゃないらしいですよ。部隊のみなさんたちはつらい訓練のあとは楽しいこともないとダメだと、春には山菜を採ってきて、野生のアスパラやタラの芽などで野菜のてんぷらをしたりしてくれるそうです。訓練が終わった後の打ち上げは楽しく、悪いことばかりじゃない。その打ち上げを楽しみにして、つらい訓練を乗り切って帰ってくるのです」  G氏の場合はいい上司や仲間たちに救われているようですが、隊員たちがゆっくり休めるための最低限の衛生的な環境が整う日は遠いようです。<文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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