更新日:2022年08月25日 10:13
ニュース

仏大統領選は「左右」ではなく「上下」の戦いである――ルペンとマクロン決選投票を在仏ジャーナリストが分析

フランス人は個人蓄財にはうるさい

 フィヨン氏は架空雇用ではない、マスコミによる組織的な誹謗だ、司法乱用だなどと常套手段で反論。フランスではこのような事件は日常茶飯事であり、普通はこれで収まる。だが、今回は違った。フランスでは、選挙資金とか党の資金に使ったとかいうことなら割合寛容だが、個人蓄財にはうるさい。フィヨン氏のケースはまさにそれであった。さらにその後、家族の雇用や禁止されているコンサルティング業務などの疑惑が次々に出た。  しかも、フィヨン氏の政策はフランスでは圧倒的に不人気なサッチャーばりの新自由主義であり、中心支持層はカトリック原理主義や同性結婚反対運動などで右派でも最も右に位置するものであった。

マクロンを支える25万人の活動家

 一方、その頃実施された左派の予備選では、大番狂わせで社会党反主流の最左翼アモン氏が当選した。  左右の既成政党がそれぞれ極端に振れたことで、真ん中マクロン氏の前に道が大きく開けた。それぞれの穏健派の政治家が次々にマクロン支持を表明した。その中にはドビルパン元首相(右派)やドラノエ元パリ市長(左派)もいる。  ただし、忘れてはならないのは、大臣在任中に「前身!」という政治団体を作って30~40代のホワイトカラーを中心に草の根のネットワークをつくって地道に勢力拡大していたことである。サークル活動のノリのものも含めれば、今日では25万人の活動家がいる。

EU離脱は大統領選の争点ではない

 今回は親EU対反EUが争点だといわれているが、英国のEU離脱と同じようなものだと見てはならない。  英国にとってEUは単なる自由経済圏でしかないが、フランスにとっては、欧州という運命共同体の存在は不可欠である。ルペン氏でさえ、「諸国民(諸国家)の欧州」といっている。ドゴール元大統領の時代の欧州共同体だ。今回の選挙での彼女の主張は、ほぼ英国のEU残留をリードしたキャメロン首相のものに重なる。  「欧州連合」が、グローバリゼーションの新自由主義、強欲資本主義が民衆を抑圧するマシーンと化したということが問題なのだ。
次のページ right-delta
仏大統領選は「左右」ではなく「上下」の戦い
1
2
3
おすすめ記事