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仏大統領選・ルペンの歴史的逆転なるか? ルペン親子を知り尽くす一水会・木村三浩氏が語る

 4月23日に行われる第1回投票に向け、フランス大統領選の主要候補たちが激しいデッドヒートを繰り広げている。フランス世論調査会社大手のイプソス・ソプラ・ステリアが2月7~12日に行った調査によると、初回の投票で支持率トップとなったのは極右政党、国民戦線(FN)の女性党首、マリーヌ・ルペン欧州議会議員(26%)。これを中道無党派のマクロン前経済相(23%)が追いかけ、右派統一候補のフィヨン元首相(18.5%)が続く展開となっている。
木村三浩氏

マリーヌ・ルペン氏が正式に「出馬表明」を行った2月5日のリヨンの集会にも来賓として呼ばれた愛国者団体「一水会」代表、木村三浩氏 撮影/山崎 元(本誌)

 フランスの大統領選は「2回投票制」のため、5月7日に行われる上位2候補による決戦投票では、マクロン氏がルペン氏を逆転するという調査結果が出ており、地元メディアの多くも「最終的にルペン氏は大差で敗北する」という見方がほとんどだ。  だが、今回の大統領選を巡っては、序盤戦で当初「最有力」と見られていたフィヨン氏に家族を巻き込んだ「不正給与疑惑」が浮上。その後、マクロン氏にも「同性愛不倫疑惑」が飛び出すなど波乱含みの展開となっている。加えて、現在4位につけている与党社会党のブノワ・アモン氏が左翼党などの左派候補に共闘を呼び掛けており、これが実現すると、左派票が一本化されマクロン氏が決戦投票に進めなくなる可能性も出てきているのだ。 「6か月後にEU離脱の是非を問う国民投票の実施」 「憲法改正で『フランス人優先』を明記」 「外国人を雇用した企業への追加課税」 「移民受け入れを年間1万人に制限し家族の呼び寄せも禁止」  時に「フランス版トランプ」と揶揄されるルペン氏が掲げる公約は、フランスのナショナリズムを前面に押し出したものばかりだが、実は、彼女と15年余りの深い親交がある日本人がいる。2010年8月、ルペン氏の実父で国民戦線の創設者であるジャン=マリー・ルペン氏を日本に招き、東京・九段の靖国神社への参拝をアテンドした愛国者団体「一水会」代表の木村三浩だ。彼は、マリーヌ・ルペン氏が正式に「出馬表明」を行った2月5日のリヨンでの総決起集会にも来賓として呼ばれたというが、なぜ、「対米従属打破」と「民族自主独立」を訴える木村氏とフランスの極右政党のトップが繋がっているのか? 帰国直後の木村氏に話を聞いた。 ――フランス大統領選ではマリーヌ・ルペン氏に注目が集まっている。「極右政権」が誕生すればEUは崩壊に向かい、世界的な「反グローバルリズム」「移民排斥」「自国第一主義」の流れが加速すると危険視する人も多い。 木村:メディアの多くは、長らく国民戦線(FN)を『極右』だとか『排斥主義』などと批判的な論調で伝えていましたが、マリーヌさんは今回の大統領選でそれほど強硬的な主張をしているわけではないのです。 トランプ大統領と重ねて彼女を評している専門家もいますが、移民政策に関しても、受け入れを年間1万人に制限し家族の呼び寄せは禁止と言っているだけで、『すぐさま全員締め出せ!』と主張しているトランプ大統領のやり方とはまるで違います。マリーヌさんはFNの党首となる以前から、国民国家とは何か? アイデンティティとは何か? そして、フランスとは何か? と地道に訴え続けており、それが若者にも広く共感され今回のような『ルペン現象』という大きなうねりになったということです。 ブレグジット(英国のEU離脱)やトランプ政権の誕生はカオスのなかで起きた現象だが、マリーヌさんは自らの国、フランスの主権を取り戻すために、現実的な政策をひとつひとつ積み上げており、その点でまったく様相を異にしています。  公約をソフト路線化したことが今回の人気に繋がっているのは間違いないだろう。2012年に行われた前回大統領選におけるルペン氏の公約には、「死刑制度の復活」やムスリムの女性が身にまとうブルカやニカブなど「宗教色の強い衣服での公的施設への入館禁止」が掲げられていたが、これらの主張は今回なくなっている。国内向けには、社会福祉の拡充や所得税の減税など、聞こえのいい政策で有権者を引き付けている点もぬかりない。
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「移民排斥」という主張が危険視されている事実
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