スマホ&PCやり過ぎが引き起こすIT文明病を考察【コラムニスト木村和久】
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その162 ―
冬から発症した五十肩。パソコンの打ち過ぎによる腱鞘炎も併発して、なんだかなあな状態で未だ治らずです。あまりにも治りが遅いからいろいろ調べてみると、驚くべきことをたくさん発見しました。これはひょっとして、現代の文明病なのではと思えてきたのです。
文明病で思い出すのは今から数千年前、人類が狩猟から農耕への大転換期を迎えたとき、一部が明らかに通常と違う形状の骨がよく見つかるというお話です。なんと背骨が極端に曲がっているのです。農耕を覚えると田植え、稲刈り、脱穀、臼挽きなど、腰を屈める作業が増えますよね。そういう役割を専門に行う人々は、自然と背中が曲がってしまうのです。
21世紀の現代、スマホ、PCの酷使によって、背骨が曲がってしまう。あり得ないようなあり得る話が今始まっています。
PC画面を凝視してテキストなどを打っていると、つい猫背になってPC画面と顔が近くなってしまいます。俗にいう「巻き肩」です。巻き肩になると、肩に負担がかかり、やがて肩甲骨にも負担が。結局背骨が曲がってしまい、農耕を覚えた2000年前の人と同じ症状が起きるというわけです。
背骨は一つ歯車が狂うと、連鎖的に全部狂いだすと言われています。背中あたりにあった背骨の負担が次第に腰回りに向かい、腰痛を併発するとかね。併発箇所は人によって違ってくると言います。私の場合は腱鞘炎になって、休み休みじゃないとPCのキーが打てない状況になってしまいました。
文字を書いたり絵を描いたりする人は、確かに腱鞘炎になる人が多いです。知り合いのイラストレーターは、何十年間の腕の酷使で、最後は書けなくなり廃業しました。たまたま資格のある仕事を副業で持っていたので、年収はさほど下がりませんでしたが、それは稀有な例です。
現役の漫画家さんでも、筆圧の強い方は腕をテーピングして必至の形相で書いています。そして一本書きあげると、専門のマッサージ師のところに行って、リハビリをする。まさに、命を削って描いているようなものです。
少年漫画界の巨匠、原作者の梶原一騎先生は、あの凄身のある顔から想像できないほど直筆原稿は繊細なタッチでした。何しろ2Bの鉛筆で、しかも原稿用紙の真上から這わすように書いていましたから、原稿が薄かった。それは当然ながら、腱鞘炎防止のための策だったようです。
「巨人の星」で、作画担当をした川崎のぼる先生は「梶原さんの直筆原稿を見せてもらって、薄いながらも時々強く書かれている部分があって、そこを強調したいのだなと思い、そうやってメリハリをつけて絵を描いた」と、テレビでコメントしておりました。
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