更新日:2022年10月05日 23:46
エンタメ

なぜガンダムの主題歌にアニメと相性抜群のへヴィメタルが使われなかったのか?【山野車輪】

『聖闘士星矢』に起用されたへヴィメタル

 1985年、ようやく3つのジャパメタ・バンド(聖飢魔II、SHOW-YA、ANTHEM)がメジャー・デビューした。同じ年に『機動戦士Zガンダム』が放送された。同作品は斜陽化していたロボットアニメ離れを食い止めるためのリーサル・ウエポンだった。『ガンダム』の続編投入という最後のカードが切られた。だが、視聴者のロボットアニメ離れを食い止めることはできなかった。だからこそ次作『機動戦士ガンダムZZ』では、子どもの視聴者を獲得すべく、「明るいガンダム」というキーワードのもと、対象年齢を下げたのだと思う。  そして、ロボットアニメに取って変わった“装着もの”“バトルスーツもの”の『聖闘士星矢』(1986年)と『超音戦士ボーグマン』(1988年)で、ようやくヘヴィメタル・バンドが起用されたのだった。  リアルロボットアニメの繁栄は1985年で終わり、それに対して、ジャパメタはこの年、ようやく一般層に届いた。当時、ロボットアニメの主題歌にガチガチのへヴィメタルの楽曲が使われなかった理由とは、つまるところ、「へヴィメタルの一般層への定着が、リアルロボットアニメ・ムーブメントに、間に合わなかった」ということではないだろうか。

子ども向けアニメではヘヴィメタルはNGだった

 リアルロボットアニメが冬の時代を迎えた後、TV放送されるロボットアニメは、SD(スーパー・デフォルメ)と称される2頭身のロボットものや、「トランスフォーマー」シリーズ、「マシンロボ」、勇者シリーズなどの児童向けスーパーロボットアニメが主流となった。しかし、ティーンを対象とした音楽ジャンルであるヘヴィメタルの楽曲を、児童向けロボットアニメに使用しないだろう。  1983年に放送されたTVアニメ『愛してナイト』で、主人公の彼氏が属するバンド「ビーハイヴ」は、原作マンガではメタル寄りの音楽性のバンドという設定だったにもかかわらず、アニメではロカビリー・バンドに改変されていた。子ども向けアニメでは、まだヘヴィメタルはNGだったのだ。先述の80年代後半に放送された『聖闘士星矢』と『超音戦士ボーグマン』にて起用されたバンドも、へヴィメタル・バンドとされていたけれど、ガチなメタルではなく、歌謡曲テイストのメロディアス・ハードロックだった。  ただし、80年代前半の時期でも、ヘヴィメタルに隣接するアーティストの起用は見られた。TAOが手がけた、まるでプログレッシヴ・ロックのような『銀河漂流バイファム』のオープニング(OP)テーマ「HELLO,VIFAM」や、TAOを前身としたEUROXによる『機甲界ガリアン』のOPテーマ「ガリアン・ワールド -Run For Your Life-」、後にRABBITを結成するAIRMAIL FROM NAGASAKIによる『蒼き流星SPTレイズナー』のOPテーマ「メロスのように」などは、いずれも渋さとメロディが光る名曲である。これらは富野由悠季監督作品以外の日本サンライズ系ロボットアニメだった。
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“へヴィメタル”を取り入れていた富野由悠季監督
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

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