ニュース

止められない北朝鮮のミサイル発射…国防は永世中立国スイスの核武装論に学べ【長尾一紘】

スイスの核武装計画

 1945年8月6日と9日、アメリカ空軍は広島、長崎に「新型爆弾」を投下しました。1週間も経たない8月15日に、スイス軍当局に一通の報告書が高官の一人から提出されました。そのタイトルは「原爆の破壊性について」というものです。そこでは原爆の「効用」がもっぱら強調されていました。  これを受けて、軍当局は核武装を決意しました。そしてそのための委員会を設置しました。その名称は「核エネルギー研究委員会」というものです。表向きの目的は原子力の平和利用でしたが、真の目的はスイス軍の核武装でした。そして、血のにじむような努力が続けられました。そしてついに、1986年に、「スイスは2年以内に核保有国になりうる」との報告書が政府に提出されました。  結局、翌年には「核武装を断念する」との政府声明が出されることになったのですが、このスイスの核武装計画については興味深い問題点が少なくありません。そのうち特に重要と思われるのは次の3点です。 ◎核武装の理由について、中立の維持のために必要だとされた。 ◎スイス国民は、核武装を支持した(国民投票が行われた)。 ◎スイスは「核拡散防止条約」を1977年に批准している。ところが、「核武装を行わない」との公式の声明が出されたのは1987年のことだ。スイスは、条約批准後も核開発の研究を行っていた。

スイス人と日本人の国防意識の違い

 スイス人にとっての「国防」と日本人にとっての「国防」は、まったく別のもののようです。この国防観の違いはどこにあるのか。要点を整理することにします。  まず、スイスにおいて国防計画は、平時、危機、有事の三つの事態に分けて策定されていますが、その内容はきわめて現実的で綿密なものです。当然「有事」に力点がおかれ、実際に起こりうるさまざまな事態が念頭に置かれています。  一例を示すことにします。敵の侵攻があったとき、自軍の兵員に損耗が生じることは避けられません。スイスの国防計画は、このような場合の補充要員のリスト作成まで考慮に入れたものです。  これに対して日本の国防計画は基本的に「平時」が念頭に置かれているようです。たとえば、有事において、民間の船舶が海軍の輸送船団に繰り込まれることは、海洋国においては当然のこととされているのですが、日本においてはこのような問題について議論すらなされていないのが現状です。
次のページ right-delta
非核三原則は違憲の政策
1
2
3
4
世界一非常識な日本国憲法

こんな非常識な憲法は日本だけ!「外国人参政権合憲説」を撤回した著者だから書けた、憲法の欺瞞を粉砕する一冊!

おすすめ記事