更新日:2017年11月15日 18:02
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希望の党や立憲民主党の経済政策は若者を絶望に追いやることになる【評論家・江崎道朗】

希望の党も立憲民主党も、社会主義政党か

国会議事堂 ひょっとしたら、希望の党がその役割を果たしてくれるかも知れないと期待した。  しかし、その期待は見事に裏切られた。  希望の党の政策集『私たちが目指す「希望への道」』には、消費税増税について「凍結する」と明記しているが、同時にこう書いているのだ。 「金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す『ユリノミクス』を断行する」「日銀の大規模金融緩和は当面維持した上で、円滑な出口戦略を政府日銀一体となって模索する」。  大規模な金融緩和によって現在の景気回復があるのに、その金融緩和を止める方向を模索するというのだ。しかも「財政出動」にも否定的だ。仮にこうした「緊縮財政」政策が採用されたら、日本は再び不景気へと転落することになる。  特にひどいのが「内部留保」課税だ。政策集には「300兆円もの大企業の内部留保に課税することにより、配当機会を通じた株式市場の活性化、雇用創出、設備投資増加をもたらす」とある。  内部留保とは、そもそも法人税(国税)と事業所税(地方税)を払った後の残りだ。これに課税するのは二重課税であり、租税原則に反する。  しかもこの内部留保は、必ずしも現金として手元に残っているわけではなく、設備拡充や技術開発などの再投資に回されている場合が多い。ただし内部留保が積み上がり、現預金の比率が高くなってきていることも事実だ。このため、麻生財務大臣のように「金利のつかない金を貯めて何をするのか。給与や設備投資に回したらどうか」と問題視する声もある。  そもそも企業が設備投資を拡大しないのは、2014年に消費税を8%にあげて個人消費を縮小させてしまったからだ。よって政府がなすべきことは個人消費を拡大する政策、つまり消費税減税と、日銀による更なる金融緩和による環境整備であるはずだ。  ところが希望の党は今回、大企業に対して「設備投資を拡大しないのなら内部留保に課税するぞ」と恫喝する政策を打ち出したのだ。内部留保を積み上げる大企業に対して罰金を課そうという発想は社会主義特有のものであり、極めて恐ろしい。  もしこの内部留保課税が具体化するならば、優良企業は国外へと逃げ出すだろう。そしてそれは、雇用環境の悪化をもたらすだけだ。  なお、民進党の一部政治家が結成した枝野幸男代表の「立憲民主党」の経済政策も見たが、金融政策や財政政策には見るべきものがない。「所得税・相続税、金融課税を含め、再分配機能の強化」と、金持ちに対する税金を上げて、その一部を貧困層に配る典型的な「社会主義政策」が掲載されているぐらいだ。  企業や金持ちに対する課税強化では、景気は回復しない。そして景気が回復しなければ、福祉を充実させる財源も捻出できないのだ。立憲民主党は、民主党政権時代になぜ景気が低迷したのか、なぜ社会保障を充実させることができなかったのか、まったく学んでいないようだ。  デフレ期には、適切な金融政策と政府による財政出動、そして民間企業の活動を妨害する「規制」の緩和で自由な企業活動を支援し、個人消費を拡大することこそが景気回復への道なのだ。そうした経済政策の基本を理解する野党が誕生してこそ、二大政党制は実現できる。  政治家の離合集散による政権交代を訴えるマスコミも存在しているが、各党の公約を読む限り、二大政党制はまだまだ早いようだ。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

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