アニソンとジャパメタの関係の深さ
――影山さんは洋楽ロックをルーツにしていますよね。でもアニソンを聴く人は洋楽や日本のメタルも聴かないし、ロックもあんまり聴かないと思われます。その辺に関して、アニソンシンガーはどう思われてるのでしょうか?
影山:どうなんだろうね。アニソンファンの中でも、イキのいい曲が好きな人は、たぶんBABYMETALとかも見に行ってると思うよ。ただLOUDNESSとかは行かないかもな。それは音楽の好みのタイプとかコア度によるんじゃない。本格的なメタルは、一般的なアニメのファンの子には壁が高いと思う。
――やっぱりメタルはメタル、アニソンはアニソンって分かれちゃってますよね、今。そこがもうちょっと寄り添ってほしいなとは思うんですが……。
影山:そういう意味でいうと、JAM Projectの男性ファンとか、年配のファンなんかは、かなりハードな音楽も好きな人たちだと思うよ。服装とか見てても、普通のアニメのファンはTシャツなんだけど、その上にライダースとか着たりしている人もいるからね。でもそれは、JAMがギタリストに横関敦がいたり、歴代、そういうジャパメタのエッセンスがいつもあったからだろうね。
――多いですよね、ジャパメタ関係者が。
影山:僕の場合は、シンガーとしての資質がパワータイプのロックシンガーなんで、そうすると回ってくる仕事って、要するによりハードに、より速いテンポで、よりハイトーンで、っていうことを求められるアニメとかゲームばっかなんで。そうすると必然的に、その中で一番合うものは何かって考えると、それをメタルと言うかどうかは別にして、やっぱり誰よりも力強い、誰よりもハードで、誰よりもハイトーンで速いテンポの音楽をやらなければいけないってなります。
――アニメも特撮もそうですけど、どんどん時代とともに技術が発展してるじゃないですか。そうすると日本のアニメ業界も、ロボットはよりリアルに、より破壊力のある映像を作ってきますよね。
影山:それに付く音楽が、スピード感とか破壊力とかで、その映像に負けているようでは、やっぱりアニソンメーカーとしては駄目なわけです。向こうがこう来たら、自分たちもこう行って、また次の年の日本のアニメがもっとすごくなる、そうすると自分たちの音楽もよりハードになる、って切磋琢磨していくしかないですよね。
――そうすると、やはりアニソン好きな人にハードな曲を届ける難しさっていうのが出てきますよね。
影山:ただ、基本的には、俺たちの場合はアニメの主題歌なんで、どんなサウンドになってもメロディーはなるだけ分かりやすくするってことがあるんですよ。自分たちが任されるアニメによって道も選ばれるし、自分たちを支持してくれるファンが求めてるものによっても決まっていくわけで。その中で、やってるシンガーはベテランだけど、放送されるアニメは最新アニメなんだから、それに見合うセンスをやっぱりぶつけていきたいと思っています。
【影山ヒロノブ】
1961年大阪府生まれ。アニソンシンガー、作曲家、編曲家。77年、ロックバンド「LAZY」でデビュー。バンド解散後、ソロに。85年、アニメ・特撮ソングに出会い、『電撃戦隊チェンジマン』などの主題歌を担当。以後、『ドラゴンボールZ』主題歌「CHA-LA HEAD-CHA-LA」や『聖闘士星矢』主題歌「聖闘士神話~ソルジャードリーム~」などを通じ、アニソン界を代表するシンガーとなる。2000年、JAM(ジャパン・アニメーションソング・メーカーズ) Projectを結成。2008年には「ワールドツアー」(世界8カ国10都市)を敢行した。現在までにレコーディングした楽曲は1,000曲を超える。
取材・文/山野車輪
(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は
『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)