渡辺浩弐の日々是コージ中
第491回
7月12日「ステージ@ニコニコ」
・徹底的にデジタル/バーチャル/オンライン化を成したホール「ニコファーレ」@六本木。壁や天井を全面スクリーンにしてしまい、360°映像環境を自由にコントロールできる。
・天井に取り付けられたモーションコントロール・カメラに要注目。会場空間に3D映像をリアルタイム合成して放送することができる。ステージにCGキャラクターを出現させて人間と共演させたり。視聴者のコメントを立体表示させたり、プレゼントの花(もちろんCG)を飾ったりすることも。
・現実のバンドやダンサーとボカロ(GUMI)の共演したライブがすごくかっこよくて、ニコニコこそが未来を開拓していくということを確信させられた。音楽イベントもいいけど、ここでゲームのイベントをやりたいね。オンラインの3Dゲーム空間をここに重ねて遊びたい。
・オタク文化とは単にネットやゲームやアニメのコンテンツをそう呼ぶのではない。未来を先取りしてしまった人達のシミュレーション行為のことなのである。リア充は現在を生き、オタクは未来を切り拓く。未来が現在に重なる時、オタク感性が輝く。たまにそういう瞬間がある。
7月21日「ニコニコ@ゲーム」
・ニコニコの番組「ゲームのじかん」で、夏合宿オールナイト放送をやってみた。放送時間は約7時間、動員は約13万人。
・僕はニコニコをテレビの近未来形と捉えていて、だからここでは通常のテレビにできないことをやっていきたい。それは先鋭的である必要はなく、ラジオ黄金期の深夜放送のような可能性もありえると思う。70年代のオールナイトニッポンみたいな。
・そしてニコニコといえば、ゲーム実況をテーマにした本が出た。『つもる話もあるけれど、とりあえずみんなゲーム実況みようぜ!』(ハーヴェスト出版)というタイトル。編集されたのはU1さんというニコニコの人気実況者で、この本読むよりまずはニコニコで実況見てみてね、という姿勢と、「これまで」のことだけじゃなく「これから」のことを見る視線が、いいですね。
8月2日「ゲーム@映画」
・『鉄拳』3D映画「ブラッド・ベンジェンス」試写。最先端ゲームのクオリティーとテンションでフルサイズの映画を作ってしまうという試みをやり切ったスタッフに敬服。物語も、ゲームのこと、鉄拳のこと、そして日本のポップカルチャーのことをわかっている人(佐藤大さん)がちゃんと書いていて、膝叩きまくり。制服女子高生も美少女ロボットもいるし、ナムコっぽさもバンダイっぽさもあるし、しかもカルトムービーの素養もあり。
・とても新しいタイプのセクシーさを感じる映像だった。つるつるした肌の美男美女たちは「不気味の谷」の手前であえて足踏みをしている。一般的にはフェティシズムととられてしまう感性かもしれないが、若い人にとってこれが今の健康的なエロティシズムなのである。
・話がそれるが僕は10年くらい前にテレビで「冷蔵庫フェチ」であるということを告白したがただただ気持ち悪がられるだけだった。今ならこの映画を観た人になら理解してもらえるかもしれない。
・それからさらに話がそれるがお盆くらいからツイッターで新しいことを始めるので興味のある方は@kozysanをフォローしておいてください。
第490回
7月1日「いろいろ心機一転」
・『ゲームのじかん』1周年。出演者の皆さん、スタッフの皆さん、ゲーム業界の皆さん、そして視聴者の皆さん、ありがとう&これからもよろしくです。ニコニコとゲームの相性についてはたくさん書いてきたけれど、この場では実践にこそ価値がある。ここでレギュラーのゲーム番組が必要だ、という答が先行した企画だった。スタッフ・出演者ともに馬力のあるチームで、多少の無理があってもなんとかしてすぐ、やりたい、と走りはじめてから今まで、あっという間だった。現場は今でも毎回「文化祭の前夜」の感じで楽しいよ。
・今はその「無理」の部分はほぼ解消されてきたと思う。各メーカーさんにも、ここでしっかりプレゼンできたら多大な(時には爆発的な)効果があることを理解してもらえた(そしてこれは今最も正しい広報スタイルでもあると思う)。これからはいかに面白くしていくか、いかに充実していくかに注力していきたい。
・ニコニコについては10年後にはフツーのことになってるはずのアイデアがたくさんあるんだけど、話してもなかなか理解されないから、実践していく。それ見てみんな真似してくれればいいと思う。
7月7日「最前線で出会う」
・星海社とそのサイト「最前線」には、同じ志向性の作家・編集者が集まっていて、ここも文化祭前日っぽい活気。僕も一緒に新しいことをやりつつ、成果もあげ貢献していけると嬉しい。
・今後の戦略をディスカッションしつつプレゼンテーションする機会としてニコ生で『いくぜ! 星海社』という番組をやった。映像アーカイブは、こちら。
文章に起こしたものは、こちら で、公開されている。小説や出版に興味のある人は、ぜひご一読を。
・僕はここから『iKILL』に続いて、『iKILL2.0』をリリースさせていただく。上記番組内でDTP担当の紺野さん(この世界の先駆者にして第一人者)と話しあうことができた。ケータイ小説からの物質化だが、だからこそ「本」の価値を明らかにする作りにしたい。ケータイ小説のブームが次に繋がらなかったのは、紙にする段階でさぼったからではないかと僕は疑っている。そのせいで、貴重な可能性の一つが消えそうになっている。
・「最前線」では新企画”カレンダー小説”も、始まった。記念日や祭日にちなんだ小説を、その当日に公開する。第1弾は佐藤友哉さん。七夕にちなんだ作品が、7月7日から公開中。僕は「敬老の日」を頂いた。
・番組中、「最前線」で書き下ろしを連載スタートすることも発表した。日刊連載だよ。
第489回
5月11日「最前線から」
・『iKILL』見本、届いた。僕の代表作。星海社を拠点に今後シリーズを進めるにあたり第1弾から改めてリリースして頂くことになったので、この機会に完全版として仕上げた次第。余談だけど挿絵をじっくり見ていたら凄いことに気づいた。みんな気づくかなー。
・さて、WEBサイト「最前線」運営元でもある星海社の戦略について、一度きちんと話を伺いたいと考えていた。そうだニコニコ生放送で、やればいいんだ。5月20日(金) 19:00〜いつものKカフェに、おなじみ太田克史COOと、そして編集者の山中武さんをお招きする。ここで、新プロジェクトの発表もあるかも。というか、あります。
5月12日「アナキズムとしてのIT」
・日本政府はソニーを助けなかった。アメリカでは事態の解明と収束のため国家機関が徹底サポートした。ソニーはこれから、アメリカの会社になっていくかもしれない。
・司法がホリエモンを潰したプロセスからも、日本国の権威が、ITによる変革をアナキズムと見ていることがわかる。既得利権にしがみついた老人達が新しい潮流を堰き止める、そして世界で進んでいる変革から国まるごとおいてけぼりになっていく。そんな国に、若者がアイデンティティーを感じなくなるまでは、とても早いだろう。
・領土問題も自然災害も原発事故も大変なことだけど、土地としての日本国がぼろぼろになり民族としての日本人がちりぢりばらばらになったとしても、アイデンティティーさえあればネットそして情報のインフラをもって国家は保たれる。そこに、21世紀の先進国の希望があるはずなのだ。
・「今」はとても大事な時だ。国をどうデス&リバースさせるか、決断するタイミングかもしれない。
5月15日「アナキズムとしてのチャリティ」
・企業の義捐金は損金として課税所得から差し引くことができる。つまり100%節税に使える。税金に納める代わりに払っている場合、実は全く自腹を痛めてはいないのだ。だからぺらぺら自慢すんなよ、という話ではなくて。
・もし税金として払っている金が適切に使われているとしたら、そういう寄付に意味はない。普通に税金納めてればそれでいいのである。ただし、税金にいったん納めてしまうとそれは例えば東電のボーナス額を守るために使われたりしてしまうわけだ。政府は信じられない、直接被災地に渡したい、だから寄付金として払う……そんな考え方なら、面白いと思うのだ。日本の、多くの大企業までもがアナキストになり得るこの状況が。
・しかしぼんやりしてるうちにそこにまで行政がしゃしゃり出てきてしまったという現実がある。そのせいで、せっかくのお金が敏速に配られなくなった。ここで政府が目に見える「害」になっている。石巻市の避難所に言って直接お金を配った人がいる。その行為に共感する人が多いということは、この国は近い将来根本的な変革の可能性があるということだ。
・ところでみんなで本を作って印税と売り上げの一部を寄付しよう、という企画に共鳴し、寄稿させて頂いた。 『わたしの3.11』 (毎日新聞社)。いろいろな立場の人々があの日あの時どこで何をしていたか、そして何を見て何を考えたかを書いている。僕は、伝えたい、売れてほしい、それからほっとしてもらいたい。と、3つのことを念頭に、書いたよ。