大炎上ブログ「ちはるの森」のちはる氏が女性猟師になった理由

ちはる氏,コムアイ氏

左からちはる氏、コムアイ氏

「ちはるの森」という個人ブログをご存知だろうか? 自らを「暮らしかた冒険家」と称するちはる氏という女性が開設しているブログで、そこに並ぶ記事のタイトルは、「今年も普通の女子が鴨を絞めて、お雑煮にしたよ。」「うさぎはかわいい味がした。うさぎ狩りと解体してきたよ。」といった具合。鶏、鴨、猪にうさぎなどを解体し、調理していく様子を写真とともにリポートしている記事が多いのだが、動物を絶命させていく過程の写真や、解体の際に当然出る血なども掲載しており、はっきり言って「閲覧注意」なブログだ。

 現在アップされている記事には「一部生々しい写真が掲載されています」といった注意書きがなされているが、この表現方法、さらには動物の解体を見せるという行為自体に対して、コメント欄は賛否が真っ二つに分かれた意見で大炎上している。個人的には、この写真の掲載の仕方は「乱暴だな」と思うものの、ブログの記事を読む限り、筆者のちはる氏には「あえてこのような表現手段を取っている」という強い意志が感じられる。これに対し、さまざまな意見が表出されるのは当然のことだし、なぜ彼女がそのような表現手法を取っているのか、いつか話を聞いてみたいと考えていた。

 そして、前回の記事(「鹿の解体アーティストの「解体ワークショップ」を体験してみた」http://nikkan-spa.jp/595072)の取材で山梨県を訪れたとき、偶然にもちはる氏と出会うことができた。現在は福岡県に住んでいるちはる氏は、たまたまこの前日から山梨入りしていたのという。なんでも、今回の解体ワークショップを主催した「水曜日のカンパネラ」のコムアイ氏の“解体の師匠”佐野琢哉氏は、ちはる氏の師匠でもあるそうで、2人はいわば姉妹弟子といったところだ。

 そもそもちはる氏が獣の解体を始めたのは2011年3月11日の東日本大震災のあと。「周りがどんなふうになっても生きぬく方法を身につけないと、次は死ぬかも」と思ったのがきっかけだという。一番最初は経験もまったくないのに鶏を絞めるワークショップを企画し、ネットなどで情報を集めてみたが、うまくいかない。そこで解体の勉強に出ようと思いたち、山梨県の佐野氏の下で「猪とか鹿とか鴨とかをたくさん絞めて、練習して」(ちはる氏)から本格的に解体を始めた。

 そして2013年1月には狩猟免許も取得。新人猟師としての活動から、そしてブログの炎上についてまで、コムアイ氏とともにたっぷりと話を聞いた。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=611477

◆新米猟師・ちはるの日常

――まず、なぜ猟師になったのかを教えていただけますか?

ちはる氏,コムアイ氏ちはる:解体を始めたのが3.11のあとからで、それから3年間、解体を勉強して鶏を絞めるワークショップなどをやっていたんです。でも、それって結局、スーパーマーケットで肉を買うことの延長線上でしかなくて「食べ物の最初から最後まで」じゃないなと思うようになって。動物を入手するところから自分で関係性をつくっていかないと、ただ絞めるだけじゃなんだかバランスがとれなくて。なんとなく精神的にもダメージが大きかったんです。それで、猟を始めたんですよ。山に入れば動物も自分も一対一の動物として闘わなきゃいけないし、足跡を追ったり、形跡を辿っていくうちに自分も「この肉を食べよう」という気持ちが育って来るし、向こうも「あ、狙われているな。逃げ切ってやろう。」みたいな、そういう関係性が山の中で作れるんですよね。

――ちはるさんは、鉄砲で猟をするんでしたっけ?

ちはる:私は罠です。一応、猟銃を使える狩猟免許は持っているんですけど、自分の手でできる範囲の肉を獲りたいという気持ちがあって、罠は手作りでやっています。なので、自分で罠を作って罠かけて、とどめは殴って気絶させて、ナイフで頸動脈を切るというやり方でやっています。

――その罠はワイヤーの罠ですか?

ちはる:ワイヤーの罠です。でもやっぱり、猟でいきなり大きい獲物が獲れるっていうのはラッキーでしかないなと思っていて、私が今獲れるのは小さい猪ばっかりですね。

――それは瓜坊っていうヤツですか?

ちはる:瓜坊よりはもうちょっとでっかい、子猪ですね。親の猪は賢いので、罠があることがバレちゃうんです。「ここに何かある」ってすごい慎重で。でも、子猪はけっこう、「あ、あそこにエサがある」っとドドドっと来て、バシンってかかっちゃうので。

――これまでに、何頭仕留めました?

ちはる:えーと、去年(2013年)の12月から本格的に初めて、12月で3頭獲って、1月はいろいろと別件があって東京や山梨に来たりしているので、今猟はお休み中です。やっぱり、罠猟は山の近くに定住していないと難しいんじゃないかなと思うんです。毎日山に入って、その山のすごいささやかな変化、例えば「ここにこんな大きな葉っぱあったっけ?」とか「ここにこんなボコッて小高い土の盛りあったっけ」ぐらいのレベルから猪の動きを探っていくので……。

――日々の活動が重要ということなんですね。

ちはる:そうなんです。だから1週間とか空けちゃうともう初めからやり直しぐらいの感じなんです。改めて猟をやってみて、すごく時間がかかるものなんだなぁ、と思いました。

――獲られるのは猪だけなんですか?

ちはる:私が住んでいるところ (福岡県某所)には鹿がいないんですよ。でも、少し離れた場所にはいるみたいですね。

――この間、奥多摩の鹿肉処理場にコムアイさんと一緒に取材に行ったんですけど、駆除を熱心にやったおかげで鹿が減っているんです。全国でも珍しいらしいんですけど。

コムアイ:その代わり、鹿が山梨県に逃げているとも聞きましたね。

ちはる氏,コムアイ氏ちはる:へー。でも、生き物って本当にそういうものだな、と思っていて。一か所だけで何かが解決されたから解決ってわけじゃなくて、やっぱり、生き物の暮らしには県境がないから、両方でバランスを取りつつ対策を全国で、横の繋がりを通じてとっていかないとダメなんだな、というのは感じますね。

コムアイ:ね。長期的に見たら、別に今減らしただけで何かが変わるわけではないからね。

――コムアイさんは猪を捌いたことはあるんですか?

コムアイ:猪は死んでいるのは見たことあるけど、捌いたことはないですね。

――女性の猟師さんが増えているんですけど、ちはるさんは山には1人で入られるんですか?

ちはる:猟のやり方によって変わってきますね。

――犬を連れていたら1人じゃ厳しいとかあるみたいですもんね。

ちはる:犬猟の場合はグループなことが多いみたいですね。でも、犬猟でも忍び猟でも1人の人もいますよ。私は最初師匠や先輩たちと山に入って、それからは1人でやっていました。でも、やっぱり猪は重いし、罠掛け道具一式山に持って行くのはなかなかハードで。私、軽トラ運転できないので(笑)。今一緒に住んでいる彼氏も猟師で料理人なので、彼とペアを組んで狩り場探しとか罠掛けとか、とどめを刺すのも一緒にやっています。

――なるほど。ご近所には女性猟師はちはるさん以外にいますか?

ちはる:います。最近、女性猟師がちょっとづつ増えているみたいで。なんでなんでしょうね。

コムアイ:若い男性は?

ちはる:若い男性も増えていると思います。周りでも若い人がちょこちょこ増えているみたいで、猟がブームになってきてるのかもしれないですね。

⇒【後編】「ブログの炎上を本人はどう見ているのか?」に続く
http://nikkan-spa.jp/611512


<写真提供/雨宮透貴 取材・文/織田曜一郎(本誌)>

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