“主夫”という生き方。無駄なプライドさえ捨てれば意外と悪くない!?
専業主夫をヒモとして描写した漫画『ヒモザイル』が炎上、育休中に不倫行為をしていた自民党・宮崎謙介議員の事件など、男女共同参画関係については何ともトホホな話題が目立つ昨今。
その問題の一端を克明に知ることができる書が、少子化ジャーナリスト・白河桃子氏の『専業主夫になりたい男たち』である。
2013年の国勢調査によると、国民年金第3号被保険者として女性の扶養に入っている男性は全国で11万人。彼らのすべてとは言わずとも、リーマンショック以降働く女性を支える主夫が増えていると考えられる。
そんな背景をふまえ、主夫たちを取り巻く実態を詳細にレポートした著書には、東大卒の兼業主夫から、主夫歴18年の専業主夫など、あらゆるタイプの主夫とその配偶者が登場し、さまざまな提言を行っている。
多くの主夫たちは経営者であったり正社員などで、安定して家計を支えられるほどの収入のある妻をサポートする存在だ。
実際に今回、白河氏がリサーチした範囲内では、主夫を伴侶にしている女性の収入は一般的なサラリーマンの3倍にも及ぶ人が多かったという。そうなると、失礼ながら「無職=ヒモ」との区別がつかないという意見も出てきそうだが、白河氏は意外とそうでもない実態について語る。
「AV監督の二村ヒトシ氏によればヒモとは女性のパンツ一枚も洗わない男性」のことらしいので、主夫とは違います。
全体的に専業はわずかで、家事・育児をしつつ在宅の仕事やアルバイトなどをしている兼業主夫が大多数です。
主夫とは、家事や育児を『主』体的に扱う『夫』という点で、家庭内のケアワークのかなりを担当している。
女性はキャリアと出産、家庭を両立させたいと思っているので、出産後に育児と家事をしっかりと担ってくれる働き者でないと主夫は務まらないのです」
主夫と妻の関係は単純な男女逆転ではなく、グラデーションがあり、その時に稼げるほうが家計の柱を担う。
男女の役割を硬直させない、フレキシブルな人生戦略なのだ。そして、主夫は男性だけが望んでなれるものではなく、彼らを求める女性によって選ばれる必要がある。当然、バンドマンのように『俺の夢を叶えるために支えてくれ』という男はNG。経済力のある女性に養ってもらうという淡い期待は通用せず、サポートの意思が感じられないと除外されるのだ。
「可愛らしく着飾って、男性に都合のいい女性を演じるのが専業主婦志望の女性の戦略でしょうが、それと同じことをすればいいというのは大きな勘違い。男性はお金目当ての女性をなかなか見破れませんが、女性は特に鋭いので、配偶者にくっついて楽をしたいという打算は非常にバレやすい」
このように単に女性に気に入られれば良いという甘いものではないが、男性にとって主夫になるメリットは「旧来の男性観を押し付けられることからの解放」だと言う。
「フランス人男性が良い例です。女性をチヤホヤして応援して、家事や子育てをやれば、自分が一家を養うプレッシャーがなくなるし、可愛い子供もやってくるしハッピーになれますよね。子育てをする権利は、男性側にだってあるんです。男として生きづらさを感じている人は、魅力的な家庭人として自分より稼ぐ女性を支える側に回ったほうが楽に生きられると思います」
では、主夫にさせてくれる女性とはどんな人なのか?
「仕事が大好きな女性。彼女たちはできればずっと働き続けたいと考えていますが、出産のリミットとキャリアの狭間で必ず行き詰まるようになります。そこにきて、『俺がいるよ』と言ってあげれば良いのです」
そして求められる資質は家事能力は後づけでよく、無駄なプライドを捨てサポートに徹することができるかどうかのみだという。
「家にいるのが好きで、コミュニケーション能力がある、愛され力が高い、などいろいろありますが、働き者で気配りができるかどうかが大事。たとえば、主夫の方曰く、テーブルのものが落ちそうになったら、すぐに手を差し伸べることができるか。無駄なプライドを捨て、女性に嫉妬せず、家族や伴侶の幸せを応援できるかどうかという利他的な性質が多くの主夫に見られました」
とはいえ日本においては「男は一家の大黒柱たれ」と考える女性のほうがまだまだ多数派を占め、プレッシャーは残る。家族どうしの集まりで主夫とわかると男性から相手にされなくなるなど、同性から差別を受ける場合もある。
「確かに、ものすごく仕事ができる女性も、最終的には男性に守ってもらいたいと考えている人がまだ多い。自分より優れた男性に尽くしたいと考えるのは女性の最後のファンタジーだといえる。それに対し、従順な女に自分のサポートをしてもらいたいというのも、男のファンタジー。しかし男らしさや女らしさの概念は時代によって変わっていきますし、現実と理想は違うということを男女ともに受け入れなければなりません」
男女共同参画が成長戦略として打ち出され、男性の長時間労働の見直しもはっきりと提言されたが、内閣府の2013年度調査によると、男性の育休取得率はわずか2%。男は育児ごときで仕事を休んではいけないといった「マッチョ的滅私奉公思想」がまだまだ根強いことを感じさせる。北欧などに比べ、男女共同参画については40年ほどの遅れがあると言われるのも無理はない。
白河氏は「男女雇用均等法を施行したとき、男性の家庭参画も両輪で推めるべきだった」としながら、こんな”裏話”を明かす。
「この本を出版した後、多くの企業幹部の女性から『実はうちの旦那も主夫だったの』と打ち明けられました。古くから女性の活躍の陰には、主夫のサポートが欠かせなかった言えます」
主夫という生き方が市民権を得る日も遠くないかもしれない!? ここまでで、「主夫でもいいかな」と思った御仁にぴったりのイベントが近日、開催される。興味のある方は下記までお問い合わせを。
※【独身限定!】主夫志望男子と働き女子のハッピーワークショップ 第2回
「女性の社会進出3割なら主夫を3割に」というキャッチフレーズのもと、各界に旋風を巻き起こしている「秘密結社 主夫の友」が提案する新しいワークショップ、大好評の第1回を経て、いよいよ第2回の開催!
【日時・場所】
2016年3月21日(月祝) 13:00~17:00
ポプラ社(新宿区大京町22-1) 1F コンベンションホール
【参加費】
2000円(ソフトドリンクとおやつをご提供します)
【申込方法】
秘密結社主夫の友Facebookページをご参照のこと
https://www.facebook.com/events/181451312218610/
<取材・文/日刊SPA!取材班>
『「専業主夫」になりたい男たち』 今や11万人ともいわれる「主夫」。キャリア女性たちの活躍の裏には、家事・育児を担う男性の姿があった |
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