パチンコよりもタチが悪いソシャゲ業界
木曽崇……国際カジノ研究所所長。エンタテインメントビジネス総合研究所客員研究員。’14年よりアジア圏最大のカジノ国際会議&展示会のアドバイザリーボード委員を務める
木曽崇:パチンコの違法釘問題もある意味もらい事故みたいなところがあって、やっぱり起点になってるのが2014年に厚労省研究班が発表したギャンブル依存症530万人という数字。社会的批判がどうしてもパチンコに向き、それを敏感に感じた警察庁側がしめにかかったってのが実態じゃないですか。まぁ、元はと言えばそもそも釘を触っていた業界が悪いんだが(笑)。
POKKA吉田:警察だけじゃなくてどこの商売でもそうで、年明けから一気に火がついたグラブル騒動もそうだけど、キッカケがあったら、いきなり規制への動きがロケットスタートするじゃないですか。こういうのって、日本社会にとっていいことなんですかね。
やまもといちろう:ソシャゲの稼ぎ方はパチンコの違法クギと比べちゃいけないぐらいとても悪質なんで、今まで許されてきたものがいきなりモメた事例として並べるのはどうかと思います。今年の正月に某当局のお偉いさんが孫にお年玉をあげたら、グラブルのガチャで全部スッてしまい、「なんだこれは!」と怒ったところから始まっていると説明されたことがあります。さっそく年始に私が「業界事情を教えてほしい」と当局に呼ばれるんですが、状況を説明した瞬間に向こうがカッカカッカし始めるんです。パチンコのめり込み対策って、依存しかねない状況がある人が歯止めをかけられずに依存していく過程じゃないですか。家庭を壊したり子供を置き去りにしたりする問題はアフターです。ソシャゲの問題はプレのほうで、なんでみんなこんなにお金を使うんだって話ですよ。それは射幸性を煽る行為じゃないですか。なんでパチンコ業界のように保通協(※台の出玉性能などが一定の範囲に収まっているか検査する公的な試験機関)がないんだって話を言い始めるわけですよ。ソシャゲはオンラインアカウントが何十万円で売られてる世界ですし、RMT(リアルマネートレード)問題もあって、今や完全に博打です。それなら当たりが出る確率を明示するべきなのに、なぜしていないのか、ということで大爆発したんですよ。
POKKA吉田:あれ、確率が低いんですよね。
やまもといちろう:運営側からすると、昨年末から今年正月にかけてのキャンペーン期間は出現確率を倍にして、0.04%にしましたと言う。もとは5万分の1だった確率が、2万5000分の1になったと。ガチャ1回300円ですから、これらの前提が正しいとするならば、およそ650万円を使うと40%の確率で出ると試算されます。グラブルをやっているのは、射幸心を煽る広告の餌食になる子供と、性格的にギャンブルに依存しやすいのめり込みの重課金者で、彼らは問題となったレアなキャラクターが出ると思ってガチャを引くわけじゃないですか。それはキャンペーンの広告ではメインに扱われてるキャラなんですよ。そのキャラが出る確率が0.02%から0.04%になることをもって、「グラブルでこのキャラクター当たります」と広告を打ったということは、ほぼゼロの確率からほぼゼロの確率になるものについて広告打ったってことになってしまいます。これはもう、おとり広告の真ん中ですよ。だって、目玉キャラが出やすいと言って美麗なイラストを出しておきながら、0.04%でしか出ないんですから。
POKKA吉田:2万5000分の1だったら言い訳できんよね。
木曽崇:パチンコ屋さんだったら、「いまだけ2倍玉が出ます」って広告を打つのは風営法で禁じられています。射幸心を煽りすぎる広告になってしまうからね。
POKKA吉田:そもそもそんな営業はやれないですよ。そんな遊技機は不正改造遊技機ですよ(笑)。
木曽崇:ガチャは便宜上はパチンコのような遊技でもないし、賭博でもない、あくまでもランダム性のあるアイテム販売方式だということになっていますが、実際はあからさまに射幸心を煽る広告表現をしています。だから歯止めがきかないという話になってしまっている。