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受動喫煙強化案に関係団体からは「現実的ではない」の意見も

飲食系の団体からは「断固反対」の声も

 2010年に神奈川県で一律的に施行された「公共的施設における受動喫煙防止条例」では約4割の飲食店で売り上げが減少。「民間企業の店舗運営に対する行き過ぎた行政指導」により飲食店オーナーから不満、嘆きの声が相次いだ。そうした事例もあったことから、やはり今回の公開ヒアリングに対して、飲食店関係団体は不退転の決意で望んだように見受けられた。しかし、第1回で日本フードサービス協会が「喫煙室の設置、分煙化の自助努力は引き続き続けるが、スペースや賃貸関係など喫煙室の設置が現実的ではないところもある。資金力の差などで喫煙室の有無が分かれ、それによって売り上げに増減が出るのでは不公平では?」と述べたところ、健康課長は「タバコの吸える吸えないで不公平になるならば、一律で完全禁煙にすれば不公平にはならないのでは?」と一蹴。同協会が「五輪に向けたインバウンドで考えれば、日本の飲食店の多様性も、特長の一つとしてあげられるべき」と続ければ、健康課長は「インバウンドのことを考えれば、むしろ完全禁煙を徹底したほうが外国のお客様に喜ばれると思いませんか?」と質問を投げかける。それに対して言葉に詰まりながら「私が知っているケースでは若い海外の方が小さい子供を連れて居酒屋に来店。『日本の居酒屋はタバコを吸えるので入った』ということもありまして……」と返すが、健康課長は眉一つ動かさなかった。  規模、営業事情を問わず、飲食店すべてをサービス業のくくりで完全禁煙ということが施行されれば、日本の飲食店は喫煙室のスペースを作れるファミレスだけになるのではないか? そんな危機感すら覚えるやりとりであった。さらに全国焼肉協会が「喫煙室の有無が問われるなら、不公平になる。喫煙室の設置うんぬんを店内でタバコの吸える条件にせず、やるならイギリス型の完全禁煙にしてほしい」と半ば逆ギレとも思える意見表明をしたことで、その懸念にさらに拍車がかかった。  しかし、「全面禁煙、『喫煙室』以外は禁煙とするなど厳格な規制を一律適用することには断固反対」と、飲食店関連団体のなかで最も強く反論したのは、全国110万施設、全従業員数700万人の全国生活衛生同業組合であった。「小規模の飲食店、喫茶店、スナック、バーなどはそもそも喫煙室の設置ができない。そのうえ、既存の受動喫煙防止の規制に則った取組み、そして厚労省助成金等を活用した投資(税金)がすべて無駄になる」と主張。また、一律に飲食店を全面禁煙にしているイギリスと日本が決定的に異なる点についても触れた。 「日本では、駅前、繁華街の路上喫煙が規制されているため、特に生衛業種が多く営業しているこれらの地域では、店舗のみならず施設外の喫煙も認められないため、客離れ等による売り上げへの影響が心配される。様々な業態や店舗、施設の特殊性、実情、お客様のニーズを踏まえた対策を講じなければ、廃業も相次ぎます」

都内を見れば、繁華街の大半は路上喫煙禁止に指定されている

 ちょうどその前のヒアリングで、たばこ販売協同組合が、「日本では路上喫煙が自治体の条例でできず、店舗内外でも吸えなくなると喫煙機会が減少する」ことを懸念。それに対して健康課長は「事前に1400の自治体を調査したところ、路上喫煙防止条例に取り組む自治体は200程度。東京千代田区ほどの強い防止条例に踏み切っている自治体は4つほどしかない」と指摘していただけに、路上喫煙が規制されいてる繁華街ならではの業界事情を鑑みた、全国生活衛生同業組合の訴えは、強く響いたように見えた。  その他、電子タバコの是非、具体的な罰則内容等、各団体からは質問も相次いだが、ヒアリングという性質上、各団体からの質問点について行政側がその場で回答、意見を表明するということはなかった。今後、今回のヒアリング結果等を基に、適宜修正、改正が検討されていくわけだが、どちらにしろ、今回の受動喫煙防止対策の強化案は、国民生活、民間企業にとって大きな影響を及ぼすことは間違いない。行政側の検討内容がブラックボックス化しないよう、今後もオープンな議論が望まれるところだ。〈取材・文/日刊SPA!取材班〉
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