「女を抱いた後の飯は美味い」態度の悪い風俗嬢に勧められた絶品ナポリタン――爪切男のタクシー×ハンター【第二十話】
いつものようにエッチなプレイをせず、風俗嬢と別の遊びをしていた。その日の風俗嬢は、競走馬のナリタブライアンによく似た馬顔の女の子。突然童心に帰った私の発案で、ラブホテルの室内でかくれんぼをすることにした。鬼の私が風呂場で30秒数える間に彼女は室内のどこかに隠れてもらう。見事3分間見つからなかったら賞金1万円を贈呈といったものだ。30秒後に「ど~こ~だ~!」と室内に戻った私の目に飛び込んできたのは、隠れることを放棄し、ベッドの上であぐらをかいてタバコを吸っているナリタブライアンの姿だった。「バカにしてんのか! やってられっか!」と毒づく不機嫌そうな彼女の様子がとても可愛くて、「見つけた~!」と彼女をきつく強く抱きしめた。
ホテルから出る時、何気ない世間話のつもりで「この辺で美味しいお店ある?」と聞いてみた時に、彼女から勧められたのがその喫茶店のナポリタンだった。高級そうな服を身に纏った料理研究家の言葉より、態度の悪い風俗嬢の「あの店のナポリタンめちゃオススメ!」という言葉を私は信じる。いつだってそうしてきた。
その日の風俗帰り、彼女に教えてもらったお店に寄った。初めての客への態度とは思えないフレンドリーな接客態度のおばちゃん店員が私を席まで案内してくれた。女優の岸田今日子によく似ているが、あれほどの上品さは感じられない。髪の毛の染め具合もパーマのかけ具合も中途半端で、なんとも下品な岸田今日子であった。
「お兄さんさ、ラブホテルの匂いしてるよ! 変な石鹸の匂い! さては風俗帰りでしょ! スッキリした後なら何食べても美味しいよ!」
それが篠さん(仮名)との出会いだった。
『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー! |
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