「女を抱いた後の飯は美味い」態度の悪い風俗嬢に勧められた絶品ナポリタン――爪切男のタクシー×ハンター【第二十話】
篠さんとの別れを済ませた後、無性に人恋しくなった私は、いつものようにタクシー運転手を犠牲にした。誰かにこの話を無理やり聞かせたい。そして無責任なコメントをしてもらいたい。そんな気持ちでいっぱいだった。私の話を聞いた三遊亭好楽によく似た運転手は言った。こういう時は好楽ぐらいの顔がちょうどいい。
「男はそんなにすぐは変われませんからね。でもいい人と知り合えましたね。お客さんはそういう人運は持ってらっしゃるんですね」
「そうですかね、みんな居なくなっちゃいますけどね」
「家に帰れば彼女さんが居るじゃないですか。ずっと一緒に居るつもりじゃないんですか?」
「結婚とかは考えてないけど、ずっと居たいとは思ってます」
「……じゃあ、彼女さんにナポリタン作ってもらいましょうよ」
「え……あいつにですか? 無理無理! 料理下手糞だし、お世辞で褒めたのを真に受けて豚の生姜焼きしか作らないし」
「不味くてもいいじゃないですか、愛する人に作ってもらうナポリタン、思い出のナポリタンですよ。裏切っていた彼女に作ってもらうからこそ余計に味があっていいじゃないですか?」
「運転手さん、けっこうエグイこと言いますよね……」
「……エッヘッヘッ」
「運転手さん、三遊亭好楽に似てますよね」
「……全然似てるとは思いませんね」
『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー! |
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ