「これが南米美女の全裸か。美しい。美しすぎる!」――46歳のバツイチおじさんは羨ましすぎる体験をした〈第35話〉
するとまた、心の中のりゅう子が顔を出した。
りゅう子「そんな女、どうでもイイわ。それ以上関わると、あなたが深く傷つくだけだわ」
俺「でも、このままじゃあ、タコ野郎にとられちゃうよ」
りゅう子「ガルシアの顔を見てみなさいよ。それを望んでるのよ」
俺「でもなー。こうやって俺に相談してきてくれてるし」
りゅう子「あなた、本当にバカね。ムカつかないの?」
俺「そりゃームカッとはくるけど」
りゅう子「だったら怒りなさいよ。今は自分を解放する旅でしょ! ここは日本じゃないのよ!」
俺「……」
りゅう子「あなた、舐められてる」
俺「……」
インドに来て、野犬に襲われ、共に酒を飲んだインド人に殴られた。その時、気づいたことがある。
俺、舐められてる。
漢(おとこ)はなめられちゃあ、いかん。
りゅう子「あんた、舐められてるわよ!」
俺「……うん。だんだんムカついてきた」
ガルシアは俺に何を求めているのか?
もしかすると「行くな!」と止めて欲しいのかもしれない。
だが次の瞬間、謎の言葉が自分の口から飛び出した。
なぜ、こんな言葉が出てきたのか? 俺自身もびっくりした。
俺「ガルシア、君はスペシャルな思い出が作りたいと言ったよね」
俺はゆっくりとした静かな口調で彼女に語りかけた。
ガルシア「…うん」
俺「もし、スペシャルな思い出を作りたいんだったら彼と一緒に夜のビーチに行ったほうがいいよ。ダンスフロアで踊るなんて、どこの国に行ってもできることだよね」
ガルシア「…うん」
俺「インドの夜のビーチで全裸で泳ぐなんて、最高にロマンティックじゃん。なんたって、ここバルカラビーチは南インドで一番美しいビーチだよ」
なんでこんなことを言ってしまったのか?
なんで心にもないことを流暢に話し続けているのだろう。
本当は「行くな!」と言いたいだけなのに――。
リーの時もそうだ。俺は肝心な時に、いつも裏腹なことを言ってしまう。
なぜだ! なぜなんだ!
そのとき、心に潜むりゅう子は悲しげに笑った。
でも、りゅう子は何も答えてくれない。
ただ悲しい目をして笑うだけだった。
ガルシアは俺の話を真剣すぎるほど真剣な目で聞いていた。
ガルシア「…そうだね。ごっつの言う通りだわ」
ガルシア、だめだ。
行っちゃいけない。
行ってほしくない。
ガルシア「うんうん。そうだよね。今夜はインド最後の夜だもんね」
俺「……」
ガルシア「私、彼と一緒に夜のビーチに行くわ」
そうか……。
行っちゃうのか……。
仕方ない。
俺はガルシアへの思いを封印し、笑顔で別れようと試みた。
俺「ありがとう! 君に会えて良かったよ」
すると、ガルシアは茶目っ気たっぷりな笑顔で俺を見つめた。
そして、俺の腕にギュつと絡みついた。
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ