「これが南米美女の全裸か。美しい。美しすぎる!」――46歳のバツイチおじさんは羨ましすぎる体験をした〈第35話〉
ガルシア「何言ってるの? 夜のビーチ、もちろんごっつも一緒に来てくれるよね?」
俺「え??」
ガルシア「ごっつも来てよ~。ねぇ、お願い!」
何なんだこのノリは!
これもラテンのノリなのか?
だったらラテンが過ぎるだろう!
それとも魔性の女のノリなのか?
君はどこまで俺の心をかき乱せば気が済むんだ!
ガルシア「夜のビーチは素敵なんでしょ? 南インドで一番美しいビーチなんでしょ?」
客観的に俺の姿を見たら、鼻の下がえらく伸びていたに違いない。
そりゃそうだ、20代の若い美女から腕をギュッと捕まれ、夜のビーチへのお誘いを受けているんだから。
ここで伸ばさなくていつ伸ばすんだ?
「鼻の下、今でしょ!」
ってくらい間抜けな感じで伸びてたに違いない。
林先生が「今でしょ!」を随分と言ってないことなんて俺は旅人なんで知らない。
何よりも、夜のビーチで全裸で泳ぐガルシアが気になってしょうがない。
俺「うーん。……そうだな」
ガルシア「……」
俺はちっぽけなプライドを一瞬で投げ捨てた。
俺「おっしゃあ! 行くか!!」
ガルシア「イエーーーイ!」
タコ野郎の顔を見ると「オーマイガー」のポーズをして俺を見た。
俺も「オーマイガー」のポーズをしてタコ野郎の顔を見た。
そして、「どうだ、コンニャロウー」という意味を込めて、渾身の笑みを浮かべ奴を見た。奴は俺の目を見て、初めてニコリと自然な笑顔を見せた。
深夜1時。
俺たち3人は店を出て、夜のビーチへ歩いた。バルカラビーチは高い崖に隣接している。俺たちは高い崖を降り、砂浜に向かった。崖道は急勾配で夜道は危険だ。
だが、「夜なのにやたら明るいな」と思い、空を見上げると満月、フルムーンナイトだった。
タコ野郎「ワーオー!」
ガルシア「わーーー! ビーチが青いわ!」
俺「すごい! 幻想的!」
バルカラビーチが南インドで一番美しいビーチと言われる意味がわかった。
深夜は海沿いのあらゆるレストランの電気が消え、星と月がビーチを浮かび上がらせる。ビーチに魔法がかかったような不思議な幻想さがある。まるで不思議の国に迷い込んだアリスだ。俺たちは何かに導かれるようにビーチをさまよった。そして、ビーチの真ん中に腰を下ろした。
ガルシア「……」
タコ野郎「……」
俺「……」
このビーチの美しさを表現する言葉が見つからない。
アラビア海にうねる大きな波が青い月に浮かびあがり、より摩訶不思議な雰囲気を醸し出していた。この幻想的な光景を表現するために言葉を紡ぐ無意味さを、我々に悠然と語りかけてきているように感じた。夜なので写真を撮ってもその美しさを表現できない。まさに目の前に見える景色だけが全てだ。
俺たちはそれを瞬時に理解した。
そして、30分ほど何もしゃべらずぼーっと海を見つめた。
すると、タコ野郎がすくりと立ち上がり、俺に言った。
タコ野郎「日本人! 一緒に泳がないか?」
やはり、こいつアホだ。
こんないい雰囲気なのに全裸で泳ぐことを忘れていない。
俺「全裸で?」
タコ野郎「もちろん!」
本当のアホだ。
アホすぎる。
だが、アホは嫌いじゃない。
俺「泳ぐか!」
タコ野郎「行くぞ!」
俺とタコ野郎はその場で全裸になった。
そして、大きな声で叫びながら海に走って行った。
サーフィンで乗れるほどの大きな波は、時に危険なほど大きかった。
しかし、俺たちはそのまま海に向かって飛び込んだ。
そして、二人でゲラゲラ笑いながら泳いだ。
夜の海は思ったほど冷たくはない。
思えば奴とはガルシアを取り合った初日、タコダンス vs 蛇拳ダンスで戦った仲。「日米クネクネしたモノ対決」をした。だが、ガルシアが帰る最終日に、まさかタコと蛇が同じ夜の海でクネクネと泳ぐとは思ってもみなかった。
二人はゲラゲラと笑いあった。やがて、タコとの間に、奇妙な友情めいたものが芽生え始めていた。ここまできたら、こいつとは終生のライバル関係なのかもしれない。
ひと泳ぎが終わり、俺たちはガルシアの元に向かって歩いた。二人ともフルちんだ。
俺「お前、ちんこでけーな!」
タコ野郎「お前、小せーな!」
二人でゲラゲラ笑い、ハイタッチをした。
ガルシアのほうを見ると、「こいつらアホや!」って顔で呆れている。
やがて、二人は全裸のままガルシアの横に座った。
ガルシア「寒かった?」
俺「いや、むしろ温かいくらいだよ」
その後、海を見ながら3人でどうでもいいトークをした。
俺とタコ野郎はお互いのダンスをディスり、思いっきり笑った。
話がひと盛り上がりすると、また静かになった。
そして無言のまま3人は静かに海を眺めた。
「…………………」
だが、俺の興味はもはや幻想的な海にはなかった。俺の興味はただ一点。
「ガルシアは全裸になるのか?」
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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