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女装で彼女とデート中、キャッチに声をかけられて…カリスマ男の娘・大島薫が自分のことを情けないと思うとき

今のボクでは、キャッチもナンパも追い払えない

 男として女性を愛するならば、男性は「この人を守りたい」という気持ちが、大なり小なりあるはずだ。ボクだってそう思うし、そういう行動をしようとする。でも、実際のところ、この見た目で生きることを選んだ以上、キャッチもナンパも追い払うことができない。それで何を持ってして《男》と呼べるのだろうか。  大島薫という存在になって、ボクは男性の自我を失ったとは思っていない。それに迷いもない。だが、こういった場面に遭遇するとき、ふと、結局のところ男らしさというのは、見た目も含めて男らしさなのではないかと、また何度も通ってきた同じ袋小路に迷い込む。  女装のクオリティを上げるため、男性のとき鍛えていた筋肉はすべて落とした。美を重視して歩きやすさをすてたようなヒールも履く。スカートは足に纏わりつき、何かあってもすぐに走ったりすることもできない。こんな状態で事件に巻き込まれたとき、ボクは果たして彼女を守れるのだろうかといつも思う。ボクは見た目だけを女性に近付けるつもりが、実質「女性」と同じになってしまったのではないかと考える。  なにもこれは女性蔑視で言っているわけではない。女性は女性として価値のある存在だ。ただ単に身体の構造上、男性のほうが力があるように生まれてくるから、男性は力の面で女性を守ろうとする。初めからボクが女性であれば、そんなところで自分の価値を求めようとはしなかっただろう(これも女性ではないから、実際の女性がどう思うのかはわからないのだが……)。ただ、持っていたものを失ったように感じるのは、結構ショックだ。  自分がなりたい見た目を追及していることには満足している。しかし、好きな人を守ってあげられないことは情けない。男として、情けない。 「お姉さんたちー!」  声をかけてくる男性たち。ボクはそんな、答えの出ない悩みを抱きながら、今日も黙って女の子の手を引く。 【大島薫】 作家。文筆家。ゲイビデオモデルを経て、一般アダルトビデオ作品にも出演。2016年に引退した後には執筆活動のほか、映画、テレビ、ネットメディアに多数出演する。著書に『大島薫先生が教えるセックスよりも気持ちイイこと』(マイウェイ出版)。大島薫オフィシャルブログ(http://www.diamondblog.jp/official/kaoru_oshima/)。ツイッターアカウントは@Oshima_Kaoru
1989年6月7日生まれ。男性でありながらAV女優として、大手AVメーカーKMPにて初の専属女優契約を結ぶ2015年にAV女優を引退し、現在は作家活動を行っている。ツイッター@OshimaKaoru
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