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「俺のカネを奪う気かッ!」認知症老人の暴走――1200万円を怪しい投資話につぎ込み家庭崩壊の危機

 埼玉県某市の自宅を出た山本さん(75歳・仮名)は、高齢者とは思えないほどの軽やかな足取りだ。私鉄とJRを乗り継ぎ東京駅に着くと、歩いて20分の場所にある雑居ビルに入っていった。そんな老人の姿を、不安げに見つめる女性。山本さんの長女であるAさん(37歳・主婦)は、目に涙を浮かべながら話す。 「このままでは家庭は崩壊です。警察に訴えても取りあってくれず、父との関係も日ごとに悪くなるばかりで……」  Aさんは三人姉妹の長女で、現在は東京都内に暮らす専業主婦だ。父である山本さんは、一部上場企業の執行役員を務めた後、定年退職して悠々自適な生活を送っていた。何不自由ない生活に陰りが見えたのは、半年ほど前に母親から寄こしてきた電話がきっかけだった。 「父が家の貯金を勝手に下ろし、訳のわからない会社に預けているというのです。その時点で約300万円ほどがおろされていて、実家には投資案内の資料が山積みになっていました。詐欺被害に遭っているのではないかと思い、夫と共に父を説得しようとしましたが……」 老人 山本さんが預貯金を切り崩してまでハマっていたのは「ビットコイン投資」だった。ビットコインとはネット上などで使用される仮想通貨だが、価格変動が大きいために、昨今では投資目的に売買されることも少なくないというが……。 「父は、昔の同僚の息子に誘われたセミナーに行って、投資を決断したようです。最初に100万円を預けたところ、2か月後には113万円になってかえってきたと。ただし、現金も通帳も投資会社に預けてあるため、実際には父の元にお金はないんです」  すぐにお金を取り返してもらうよう父を説得したAさん夫婦だったが「すべてはお前たちに財産を残す為だ」と、頑なに投資をやめない山本さん。その後すぐ追加投資をし、現在は合計で1200万円ほどを預けているという。毎日のように父親に電話をして、やめさせるよう説得していたAさんだが、父は理解してくれるどころか次第に態度が硬化。今では電話を鳴らしても無視される状況なのだという。 「父は数年前に脳梗塞で倒れて、少し認知症のような症状が出始めています。急に頑固になったり、忘れっぽくなったり感情の起伏も激しい。今では『お前たち夫婦は俺のカネを狙っているのか!』などと疑いだす始末。弁護士に相談して、後見人制度を利用しようとも考えましたが、父は『俺はボケていない、グルになってカネを奪う気か!』と激昂するので断念しました」
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ターゲットはボケ始めた裕福な老人
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