安倍晋三が“皇室に弓を引いた”蘇我入鹿と並んだ日…「上皇后」とは?
新聞に載るのが名誉の場合とは限らない。たとえば犯罪者の場合。同じく、歴史に名を残すのも、時と場合による。こと皇室の歴史に名を残す場合。
天皇陛下の退位を実現する特例法案が可決され公布された。
以前、評したように、譲位に関しては褒めておいた。①特例法で細目を定め、速やかに譲位を行う、②ただし、1条でもいいので典範に追加項目を挿入し、「違憲の天皇」の疑いを回避する、③上皇の尊号を死守する。この3点、与野党ともに衆参両院議長のあっせんで歩み寄り、妥当な結論に至った。
昨年8月8日の陛下のお言葉により譲位が実現したのであるから、東大憲法学の「天皇=ロボット説」はここに崩壊した。
与野党ともによくやった! と褒めた後に、政府がやらかしてくれた。
譲位された後の天皇陛下の尊号は上皇。当然である。なぜ正式名称の「太上天皇」ではなく、略称の「上皇」を正式名称にするのか意味がわからないが、歴史的に定着した名称であるので、これは許容範囲だ。
しかし、譲位後の皇后陛下の尊号を「上皇后」とするとは、いかなる先例に基づいているのか。安倍内閣には歴史の専門家が一人もいないのか。
先帝の皇后の尊号は、皇太后である。政府の有識者会議では、「未亡人の意味合いがある」との理由が採用されたとのことだが、曲学阿世とはこのことだ。誰に媚びているのか知らないが、皇室の歴史は公称2677年だ。たかが150年もない明治以降の歴史だけで語ってどうするのか。
1
2
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中
記事一覧へ
![]() | 『噓だらけの日本古代史』 ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作は、日本の神話から平安時代までの嘘を暴く! ![]() ![]() |
記事一覧へ
|
『日本一やさしい天皇の講座』 天皇はいかにして権力を手放し立憲君主になったのか。そして今回、論点となった譲位、女系、女帝、旧皇族の皇籍復帰の是非について、すべて「先例」に基づいて答えることで、日本人として当然知っておくべき知見を集約した一冊。 ![]() |
【関連キーワードから記事を探す】
日本国民は「マトモな野党第一党」を持てるのか/倉山満の政局速報
「既得権益の打破」から”既得権益集団”となった日本維新の会/倉山満の政局速報
政権交代を目指さない“枝野路線”。否定できない野党に未来はない/倉山満の政局速報
菅内閣の打開策はただ一つ。4月26日に内閣改造だ/倉山満
“安倍応援団商売”は戦時中の東條御用言論とそっくり――倉山満
日本国憲法によって日本の伝統は“リセット”された? 上念司氏が語る教科書に載らない戦後史
常に不安定な「皇位継承の伝統」をいかに守るか/倉山満
反論できない皇族をサンドバッグのように扱う人々の卑劣さ/倉山満
天皇や皇族は奴隷ではない。権限がないことと自由や人権がないことは違う/倉山満
特別な祝日「天皇誕生日」について調べてみた
安倍晋三を祀る神社が建立…「死ねば、みんな神様」になるのか。神社本庁の見解は?
続出する五輪汚職逮捕。政治とカネ=利権根絶のカギはどこにあるのか?<評論家・佐高信氏>
浅慮の果ての国葬<著述家・菅野完氏>
メディアに蔓延する“安倍ロス”。批判記事を書いてきた記者も「心に穴が開いたまま」
安倍氏の国葬に反対するのは“非国民”?勝手に決めるな/倉山満
悠仁さまの「東大進学反対署名」に東大生が反応。「受験生に忖度するような情けない大学じゃない」
日本人の多くが知らない「偉大な天皇」とは/倉山満
皇室の伝統を壊してはならない理由/倉山満
皇位継承と男女平等は無関係だ/倉山満
悠仁殿下お一人が背負う「皇位継承の歴史」/倉山満
皇室を皇室たらしめる「越えてはならない一線」/倉山満
菅義偉前首相が今さらながらに評価される理由/倉山満
皇籍復帰は「門地による差別」という誤解/倉山満
今の段階で皇位継承問題について決めておかねばならない理由/倉山満
反論できない皇族をサンドバッグのように扱う人々の卑劣さ/倉山満
台湾“草食系男性”増加で変わる成人用品市場「約67.5万円のラブドールが週に70体売れた」驚きの実態
世界195か国の憲法を研究して知った「世界の変わった憲法」7選
「受けます。僕しかできないでしょ」 石丸伸二氏が明かした次の可能性
安倍晋三氏が残したもの。“優しく繊細”か“冷徹で強権的”か/山口真由
刑務所でも高齢化が問題に。受刑者が高齢受刑者の介護をすることも…
この記者は、他にもこんな記事を書いています