更新日:2022年10月01日 01:24
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安倍首相「自衛隊の憲法明記」発言で9条はどう変わるか?――憲法学者が3つの学説から検証

9条はどのような条文になるのか?

 安倍首相の構想は、9条の1項と2項をそのまま残して、自衛隊の規定を置こうとするものです。この9条を残して新たな自衛隊条項を付け加えるには、2つの方法があります。その一つは、9条2項の次に、3項を置く方法です。9条は、1項、2項、3項ということになり、この3項が自衛隊条項ということになります。  もう一つの方法としては、9条はそのままにして、あらたに、9条の2を置くべきだという主張です。この方法では、9条と10条の間に新たな条文が「9条の2」として置かれることになります。そしてこれが自衛隊を定めるものとされるのです。  私見において、これとは別な提案をしてみたいと思います。「9条3項」と「9条の2」を併用するのです。たとえば、次のようになります。 〈9条〉 ①、② (現行ママ) ③ 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。 〈9条の2〉 ① 日本国はその主権を維持し、国際的な平和活動に協力するため、自衛隊を保持する。 ② 自衛隊の最高指揮権は、内閣総理大臣に属する。 ③ 自衛隊の組織及び任務に関する事項は、法律でこれを定める。

憲法改正で「自衛隊」から「自衛軍」へ

 C説の立場からすれば、理論上は、9条の改正はなくてもよいのです。しかしながら、護憲論者においてA説が主張され、政治家や官僚層においてB説が今なお支持されている以上、憲法改正によって、自衛隊の存在を明文上明らかにする必要があります。  その名称が「自衛隊」であるか、また「自衛軍」であるかは問題ではありません。憲法改正を行うことによって、はじめて「戦後体制」に幕を下ろすことができるのです。これによって日本という国は生まれ変わることができるのです。  日本国憲法は、占領軍によって日本弱体化のために作られた憲法です。これがそのまま持続するかぎり、民主主義も国民主権もすべて本物とはいえません。日本国民自身の意思によって憲法改正がなされなければなりません。「自衛隊」が名称はともあれ、普通の「軍」になるとき、国民主権がはじめて現実のものになるのです。 【長尾一紘(ながお・かずひろ)】 中央大学名誉教授。昭和17(1942)年茨城県生まれ。中央大学法学部卒業。東京大学大学院法学政治学研究科を経て、中央大学法学部教授。この間、司法試験考査委員、中央大学法科大学院教授を併任。「外国人への地方参政権付与合憲説」を日本で最初に紹介したが、理論的反省と民主党政権の政策への危機感から、自説を撤回。その後「外国人参政権違憲」の著書、論文を発表した。最新刊は『世界一非常識な日本国憲法』(扶桑社新書) <取材・文/日刊SPA!編集部>
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世界一非常識な日本国憲法

こんな非常識な憲法は日本だけ!「外国人参政権合憲説」を撤回した著者だから書けた、憲法の欺瞞を粉砕する一冊!

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