更新日:2022年08月06日 02:13
仕事

日本企業で「新規事業」がなかなか進展しない“意外で、深刻すぎる背景”

「失敗する姿」を見られたくない

ミーティング それまで10点だったものをまず自分たちのちょっとした努力で30点を目指そうと言っているのに、急に100点満点をカネもない会社でカネをかけてでも目指すべきだと本気で言い返してくるわけです。  こうした事例に遭遇した当初は単にサボりたいことを隠すために言っているのかと思いましたが、対話を進めて紐解いてみると違う構図が見えてきました。  失敗する自分(たち)を見られたくないという意識が、筆者からするととても過剰に働いていることが多いです。

「キラキラした成功例」ばかりが目に入る

 ちなみにこの事例では笑い話のような会話で背中を押し、ちょっとずつPDCAを進めていきました。 「SNSをやったところでアクセス数もフォロワーが伸びると思えない。恥ずかしい。だから嫌なんです」 「そうですか。アクセス数もフォロワーが伸びないのだったら、誰にも見られてないってことなのに、どうして恥ずかしいんですか? 見られてないけど恥ずかしいってどういうことですか?」 「……そうですね」 「自分たちで20点目指しましょう。でないと『その道のプロ』がなんぼのもんか差がわからないですよ。大丈夫、20点にも満たないときは誰にも見られてないから恥ずかしいはずないですよ」  ネットやSNSによる情報収集の、その情報源があまりにも極端なキラキラした成功例の割合が多いことで起因していると捉えています。成功者はやはり承認欲求のもと披露したいので、ネットやSNSに情報を流します。一方で、失敗者が冷静にその理由を分析して載せることはなかなかないでしょう。
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「効率」ばかりに焦点が当たることの問題点
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株式会社リヴァイタライゼーション代表。経営コンサルタント。東京大学大学院修了後、投資会社、経営コンサルティング会社で企業再生などに従事したのち、独立。現在も企業再生をメインとした経営コンサルティングを行う。著書に『好景気だからあなたはクビになる!』(扶桑社)などがある

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