渡辺浩弐の日々是コージ中
第110回
03年3月29日「ゲームをどう超えるか」
・「インフォメーション・アートの想像力展」@東京都写真美術館に。
・デジタルテクノロジーを活用した学生アート作品の展示がメイン。球面型のゴーグルディスプレイを使って目玉をてのひらに移す、床の上に立った人の影の部分が七色に光る、マイクに向かって喋るとスクリーンの木の枝からその言葉が絵になってこぼれ落ちてくる、……etc…。
・この領域では作品をインターフェイス優先でデザインしようとする人が増えているらしい。ただ、インタラクティブ・メディアのためのインターフェイスはこの20年間、本当に多種多様なものが提示されている。その中で定着したものはモニターの前に座ってプレイするテレビゲームのあのスタイルだけだったのだ。単発のアートではなくインフラとして提示するなら、一瞬でもそれを超えられるだけのインパクトが必要だ。
03年3月30日「ケータイがハイビジョンに!?」
・遂に、家庭用のハイビジョンカメラが発売になった(GR-HD1/日本ビクター)。価格は実売で¥35万くらい(業務用のものは今まで¥2000万~3000万だった)。編集はMPEG2対応ソフトで、パソコン上でできるわけだ。個人クリエーターのスタンスで劇場用映画クオリティーの映像が制作できる時代が遂にやってきたということだ。
・いやそれどころではない。拙著『ひらきこもりのすすめ』にも書いたけど、デジタルのツールはいったん小型化、低価格化しはじめると早い。中高生のケータイに搭載されたカメラがハイビジョンになる日も近いだろう。コギャルが見ている風景からTVや映画までが、今後、ひとつながりになっていくわけだ。
・手前ミソな話だけど、そこからどんなすごいことが起こるかっていうシム・フィクション小説集の第2弾『プラトニックチェーン02』(エンターブレイン)出ました。よろしく。
03年4月2日「自殺」
・きちんとした自殺は現代の死に方としては良い選択肢だと僕は思う。ただ、借りをたくさん残して逃げるのはダメだ。全てをきちんと精算してからでないと。死ぬ時にいろんな人に迷惑をかけるのなんて論外だ。
・社会に対してなら、血液や臓器をたくさん寄付してから、という手もあると思うが。
第109回
03年3月24日「杉並区偉い」
・山村浩二監督作品『頭山』を観る機会を探していたら、意外なところに見つかった。杉並の公民館のホールで上映されていたのである。東京国際アニメフェアの関連イベントらしい。
・公民館といっても、DLP上映システムもあるし、音響もしっかりしている。『頭山』だけでなく、川本喜八郎、森まさあき、伊藤有壱、うるまでるび etc… 各ジャンルのアニメ作家のショート作品を日替わりで大量に上映していて、とても楽しめた。アート系のショートアニメ作家の発表の場は今非常に少ない。特に、大スクリーンに上映される機会は貴重だ。
・『頭山』は日本の風景、喋り、音楽の美しさをきちんと現代的に表現した傑作。この日の上映中に発表があったようで、スクリーンに突然「アカデミー賞おめでとうございます」の文字が。一瞬『頭山』が獲ったのかと思った。でも、近い将来短編アニメーション部門で日本人がオスカーを獲る可能性はとても高いと思う。こういうタイプの作品が世界に認められていく可能性を知らしめたことだけでも、意義は大きい。突破口は出来たわけだ。
03年3月26日「短気な時代」
・短いアニメを次々と見るのは気持ちいいなあ、と思っていた矢先、『メイドインワリオ』(任天堂/GBA)にハマった。一個数秒のゲームを次々と(全部で200種以上)こなしていくのだ。短いゲームを立て続けにプレイするのも、ものすごく気持ちいい。
・映像に対しても、ゲームに対しても、いつのまにか気が短くなっている自分に気付く。他の人も同じだと思う。映像なら数分、ゲームなら数秒が適正時間だったりして。というのは極端だけど、連続ドラマとか長編映画って、そろそろすたれてきそうな予感がするのだ。
03年3月27日「中野ブロードウェイの秘密」
・中野ブロードウェイの防災訓練。管理責任者に案内してもらいながら、建物の表裏を歩き回る。40年前には最先端の超高級マンションだっただけあって、随所に意外なメカが仕込まれていて感動しきり。隠し扉とか隠し通路も多数。しかし参加者はほとんど年輩の方々ばかり。若い住民はこういうものの存在を知るチャンスがないのだ。
・年輩の商店主の方々に話しかけられた。「最近はここもまた話題の場所になってきていて、テレビの取材もよく入る。今日はタレントのエガシラが来るらしい。知ってるだろ? ジャニーズのエガシラ」と。エガシラではなくアラシと言いたかったらしい。
・一般にあまり知られていないが中野ブロードウェイの上層階には格安のホテルもあるし、屋上にはゴルフのミニコースやプールもある。地階には食料倉庫もある。防災シャッターも完璧で、有事の際に完全に閉めきっても住民は内部で2年から3年を生き延びることができるという噂。鳩も湧き水もうまいし、最高です!
第108回
03年3月16日「中野系」
・中野ブロードウェイに暮らす楽しさを堪能してる。本、CD、DVD、カード、フィギュア etc…あらゆる趣味製品は徒歩30秒で見つかる。ていうかどれもすぐに見に行けるのだからもはや買う必要もないかも。それか、買いまくって飽きたら自分の店で売ればいいのか(<そういう店じゃないけど)。
・例えば本なら、在庫がなくても取り寄せてもらえば数日で届くわけだから、ネットで注文するより早い。絶版になった小説やコミックも、各ジャンルの古本屋さんが揃ってるからOK。タイトルを告げておいて入った時に連絡をもらえばいいのである。
・ところで花輪和一の『刑務所の前』はサイバーパンクですね。村上春樹の『海辺のカフカ』と読み比べてみると面白い。
03年3月17日「Flashでテレビアニメ」
・青山のテピアホールにて、「デジタルコンテンツジャパン」というイベント。経済産業省のデジタル系プロジェクト支援システム「ジセコン」の発表会もこの中で開催されていた。企画コンテストをパスしたチームにそれぞれそれぞれ約¥1000万程度の予算をつけてプロトタイプまでを仕上げてもらうというものだ。
・Flashのみで作成したテレビ放映用アニメ、ネット上の3D空間を活用したコミックのエンジン、立体音響を利用したタイピング学習ソフト、など、など。派手ではないがじんわりと市場を作っていきそうなプロジェクトがたくさんある。たとえば日本のアニメ制作プロセスの一部分をFlashメインにすることによって、ひきこもり青少年に対するものすごい雇用効果や、放送や配信について海外も含めた新規マーケット開拓が見込まれるのである。
・一緒に審査員やってる仙頭プロデューサーと立ち話。仙頭さんも沖縄にハマってるみたいで、青山監督とりんけんバンド関係の映画撮ってるらしい。楽しみ。
・それから僕、3/29東京都写真美術館で開催される「インフォメーション・アートの想像力展」というイベントで、パネルディスカッションに参加します。僕はほとんど喋らないと思うけど他は錚々たる面子なので(偶然だけどここでも仙頭さんと同席するかも)お暇ある方はどうぞ。
・ところで僕は以前恵比寿ビール工場があった頃、すぐ近くに住んでいた。地元の人は年2回くらい「ビール工場見学会」に招待されて、もちろんビール飲み放題。あれで「新鮮なビール」というものの旨さを知った。良かったなあ。
・イベントは3/26→3/30。デジタル系、アート系の大学生の作品発表がメイン。