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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。

第170回

6月25日「物書き志望の方へ」

・前回、小説についても多メディア展開の中に位置づけるべきでは、という提案をした。それに対して、小説家ならいろいろ不純なこと考えずにとにかく小説に集中するべきだ、というご意見をもらった。

・それはプロの考え方ではない。趣味で書くならそういうスタンスでいいと思うが、プロとして、人生をかけてやっていくとしたら、ちゃんと生計立てて、他の人にも儲けさせて、というやり方を常に考えていなくてはならないと思う。

・いや自分は才能あるから小説なら単行本いっぽんでやっていく、という人もいると思う。その意気は正しいけれど、今それはとてもきついのだ。本というメディアが商業性から外れているからである。

・過去の蓄積を持たない若い作家が小説だけで食っていくのはもう至難のわざである。1000円の本を1万部刷ってやっと印税は100万。年に2冊出せれば早いほうだけど、それてやっと年収200万。

・小説以外の文章を副業で書いて生計はそれで立てていく、という考えが昔はあった。しかし今は小遣いかせぎのつもりでできるほど評論等の仕事もたやすくはない。巨大掲示板、というライバルがいるから。

6月26日「プロの文章とは」

・自分の買ったゲーム1本についてだけなら、シロートの方が、プロのゲームライターよりもずっとやりこんでいたりする。そんなソフトについてネット上で、何の規制も受けずに書きたい放題書いている。そういう文章が、ただでいくらでも読める。この時代にプロのゲーム評論ってあるんだろうか……という問題提起をどこかでやったことがある。

・自分の場合、今はよほど時間と労力を取れる状況でない限りゲーム評論の仕事は遠慮しているのだけど、先の問題に対しての答は自分なりに複数用意はしている。プロとしての評論のやり方は、ある。プロにしかできない取材と分析をベースに、プロのレベルの企画の上に文章を構成することだ。

・プロ/アマの違いは文章自体の巧拙ではなく、そういう部分で線引きされると僕は思う。プロの文章は、対象の作品を独自の光で照らし出す。それは光それだけでも美しいし、作品のことをよく知った人間にもその新しい価値を気付かせてくれる。

・プロなら、例えば『ぐりとぐら』の評論でだって感動させることができる。例を掲げると、この文章を書いた人の力量はすごいと思う。
http://be.asahi.com/20030201/W21/0001.html

6月28日「フリーターがんばって!」

・『フロムA』の取材を受ける。若い層に向けて仕事のお話を、ということになると、僕の場合は当然「ひらきこもり」論というか「大企業とかお偉い方々のことなんか気にせずに、自分の本当に好きなことだけを徹底的に追求して、プロになっていくべきだ」という提案になる。そのために、パソコンやケータイやネットをどう活用するか、というあたりを話した。8月16日発売号。

・さて話し終わってから、取材にいらした大岡さんが著書を下さった。『好きをシゴトにした人』(主婦と生活社)という本。自分自信の延長として作品を創ったり料理を作ったり商品を見付けたりして、独り立ちしている若者たちの記録。我が意を得たり! と、それからまたしばらく話しこんでしまった。

第169回

6月22日「書き入れ時」

・山にこもっていた。いろいろと事情があり、その間、肉と野菜しか食べられなかった。つまり今はやりの「低炭水化物ダイエット」を実行していたことになる。空腹になることもなく10日間で5キロ痩せた。確かに効果は大。

・ただしこの間にコロステロール値は10パーセント以上も上がった(193→217)。このあたり、注意した方がいいと思う。体重さえ減るのなら早死にしてもいいという人以外は。

・さて、こもっている間は主にマンガ原作に気合いを入れていた。『プラトニックチェーン』は今が「書き入れ」時。僕は絵についてはベタの手伝いも出来ない人間なので、ここから先は遠野ヤマ先生に気を送るしかないが。7月には『Gファンタジー』『少年ガンガン』『ガンガンYG』の3誌に5作品が載るので、ぜひ読み比べてみてほしい。もちろん全て別作品。7月末には単行本も3冊リリース予定。

・そしてネット連載の長編バージョン『晴れときどき女子高生』の更新頻度もアップする。何がなんだかわけがわからなくなってきた。というのは嘘で、全部、準備万端で進めてきたことである。関係者の皆様に大感謝。

・本がどんどん出ると「忙しいでしょう」と言われるが、実は企画から単行本までには数年はかかるもので、出る頃にはすっかりラクになっているものである。

6月23日「逆走」

・特にストーリー系コンテンツは(小説→)マンガ→アニメ→ゲームの順で作られていくパターンが主流なのだけど、今の時代それはおかしいと思っている。これは『プラトニックチェーン』を例にして話すとわかりやすいかもしれない。

・『プラチェ』の場合、制作準備(取材)を開始したのは1997年。ケータイがネット端末として使用され、さらにモニターやカメラが搭載されていった時、人間や世界はどう変わるか、という思考実験がとっかかりだった。

・まず最初に、新しい時代にコンピュータはどう操作されるべきかというシミュレーションからスタートした。それで、結局かなり具体的な操作系を作ってしまった。オンラインの画面上で様々な映像情報をゲームのように扱うためのインターフェイスである。僕はゲーム制作会社をやっているのでこれをPS2上に完成させ、いろいろな状況を想定し操作し改良してから、特許を申請した。この過程でゲームのプロトタイプはできてしまったわけである。もちろんこの段階で商標も出願。

・そして提携しているアシッド社では、フルCGアニメの制作が進んだ。アニメはアニメとしてシーグラフなどで評価され、地上波テレビでもオンエアーされた。

・しかるのちに、マンガの制作に入ったわけである。ゲームやアニメの制作過程でそういうケータイツールを使っている前提の世界観やキャラクターはできてしまっている。その上にマンガ業界のプロが集まって、これはこれででかなりとんがったものとして仕上がっていった。

・ここまでにずっと書き続けていた企画書を、次は小説の形式に仕上げていった。これも刊行が始まり、続いている。既に2冊出ていて、この後さらに出していく予定である。

・デジタル時代のコンテンツはこの向きの流れで育てていくことにより、作業がとてもスムーズになる。今の業界はそれが逆だからいろいろと摩擦が発生しているように思える。例えばマンガからアニメになる時にどうしても作品性が変容したりスポイルされてしまう、とか。

・そして今僕がやってる仕事はというと、10年後のためのコンテンツの仕込みなのである。それまで生きてられるかどうかなんて、考えない。

6月24日「ケータイとテレビ」

・ケータイ連動型の才能発掘テレビ番組『クリエーターズ・ライブ!』(BSi 毎週水曜25:00~)評価はまずまずらしい。めでたし。期待してますよ、というコメントをたくさん頂いている……んだけど僕は結局降りちゃいました。デジタル系情報番組の立ち上げまでを思いっきり手伝う、というパターンの仕事が多いなあ。

・僕としてはこの番組のおかげで、受像器としてのケータイの可能性に目覚めた。ケータイがデジタル放送とリンクした時、ケータイでこそ見る番組、というものがありえるはずなのだ。それが成功したらものすごく巨大なマーケットが出現するのだ! ぜひやってみたい。

第168回

6月2日「良いマシンだったんだけど……..」

・『トゥルーファンタジー ライブオンライン』開発中止との報。X-boxはもう日本市場を見てないんだろうか。惜しい。

・有名ゲームメーカーからマイクロソフト日本法人に引き抜かれて今までがんばってはきたものの、やっぱり古巣に戻りたい、でも戻れないよなあ…..という話を最近良く聞く。そういう人達が今 「ジェンキンスくん」と呼ばれている。

6月4日「自傷自粛」

・集英社の野村さんから電話。ネット連載している『晴れときどき女子高生』の次回アップぶんを大幅に書き直すことに。

・原稿を渡したのはもうずいぶん前なんだけど、ニュースを見ながら、こりゃ来るかもと予想はしていた。シム・フィクション(C)を書いている以上、こういうことは覚悟だ。こだわる作家もいるらしいが、ネットやテレビでの発表物については、表現を変えても意図が変化しないことであれば、さっさと書き直すことにしている。自分で内容に責任の持てる単行本にする時に、元の描写を復活させよう。

・ところで例の事件について僕のところにもいろいろと電話取材が入っているけれど、マスコミ側はもしこれを機に小中学生のネットライフを考察するつもりなら、とことん深くやるべきだ。コンピュータやネットで一番大切なのはハードウェアやソフトウェアのことではない。コミュニケーションの方法論である。その教育ができるなら小学校の科目をどれでも一つくらい減らしてもいいと思うが、今のところは学校に期待するべきではないだろう。

6月7日「戦時下のリアリティー」

・完全に韓国映画にハマっている。今日は『シュリ』のカン・ジェギュ監督の新作『ブラザーフッド』試写。スペクタクルシーンは様々な戦争映画のおいしいとこ取りだが、そのリアリティーはハリウッド大作を超える。

・戦闘の凄まじさは出色だが、役者の必死の演技はその迫力を凌駕している。それがちっともクサくないのは、この国にそういう熱が実在するからだと思う。ハリウッドにとってベトナム戦争はもう過去のものになった。イラクで起こっていることに対しても痛みを共有できてはいないだろう。そして日本で本当にリアルな戦争映画を撮りたいという作家は深作欣二監督を最後に消えたようだ。しかし韓国にとって戦争はまぎれもなく現実なのだ。勃発から50年以上が経っていても、朝鮮戦争は過去のことではない。休戦状態が続いているだけで、今でも戦時中なのである。若者には兵役義務があるし。

・それから韓国映画の勃興はもちろん国策、というより国策のたがが外れたことが大きいということがこの映画を観ているとはっきりわかる。戦争映画であっても、ラブシーンや政治批判も含む思想性がきちんと表現されなくては成立しなかった作品なのだ。

・さて今日から原稿書きでこもります。富士の裾野にやってきましたよ。

第167回

5月24日「世界遺産に指定して!」 ・『東京一週間』で中野特集をやるということで、『中野ブロードウェイ評論家』として取材を受ける。中野をぶらぶら歩きつつ、お薦めの場所などをいくつか紹介させてもらった。6/22発売号。 ・ […]

第166回

5月21日「ケータイ先進国?」 ・『子猫をお願い』試写。20歳の女の子たち5人がスッピンで、普通に悩んだり笑ったり考えたり走ったりする日常。普通なのに一瞬も目が離せない。いきなり韓国映画にハマりそうである。 ・ケータイが […]

第165回

5月19日「試験の問題」 ・某有名進学塾の関連出版社が発刊済みオリジナルテキストを6万部も回収、との報道。使用していた文書の著作権について洗い直し作業を進めているわけである。 ・例えば国語の問題で使われる文学作品や評論文 […]

第164回

5月13日「小さな最終兵器」 ・武器は、戦いが始まる前にあらかた奪われていた。その上で敵は圧倒的な兵力をもって取り囲んできた。彼はあきらめなかった。遂に踏み込まれた。住む家を壊され、街を焼き尽くされた。親兄弟や友を、殺さ […]

第163回

5月10日「坂の街」 ・事務所のある神楽坂のあたりは細くて曲がりくねった坂が多く、そのせいで再開発が難しいらしい。江戸時代の古地図を調べてみると、この界隈だけは現在の地図とぴったり一致する。道路の曲線や太さも、神社や住居 […]

第162回

4月27日「コントローラーかキーボードか」 ・CESAの2004年度版調査報告書が届いた。「日本・韓国ゲームユーザー&非ユーザー調査」がテーマになっている。つまり今回は日韓の比較を軸にゲーム産業のデータをまとめているわけ […]

第161回

4月12日「新企画」 ・三才ブックス『ゲームラボ』編集部にて、担当編集者の岩田さん、ライターのジャンクハンター吉田さんらと打ち合わせ。そういえばこないだテレビのクイズ番組みてたらこの吉田さんが「ファミヲタ王」になってて驚 […]