宗教団体の総本山で信者専用の巨大釣鐘を鳴らせ!――爪切男のタクシー×ハンター【第九話】
彼が式場に選んだのは、海が見える丘のてっぺんにある綺麗な場所だった。その鐘を鳴らした二人は永遠の愛を手に入れるという伝説の鐘で有名なのだという。彼がそんな場所を選ぶとは意外である。関係が疎遠になっていたことよりも、彼だけが大人になってしまうようなそんな寂しい気持ちになった。式場まで連れて行ってくれる送迎バスがあったのだが、彼の両親と同じ空間に居ることがどうしても耐えられなかった私は、現地まで一人でタクシーで向かうことにした。
普段乗り慣れている東京のタクシー運転手に比べ、やはり田舎のタクシー運転手はどこか落ち着いて人懐っこい印象を受ける。今回の運転手は刑事コロンボ役で有名なピーター・フォークにどことなく似ている。行き先を告げると、運転手は楽しそうに喋り出した。
「お客さん、結婚式に行かれるんですか?」
「そうなんです、私、結婚式とか全然出ないので緊張してます」
「あんなの、なかなか慣れるもんじゃないですよ。お祝いのお金もかかるし困っちゃいますよね(笑)」
「いや、本当におっしゃる通りですよ」
「あの教会は景色も最高ですし、幸せになれると伝説の鐘もあるしで大人気なんですよ」
「伝説の鐘の話は聞きました。そういう類の物が大嫌いな奴だったんですけどね……」
鐘と言えば、私は鐘に関してろくな思い出がない。
人生で初めて出来た彼女は家族ぐるみで怪しい新興宗教をしている女性だった。その宗教の主な教えは「毎朝五時に起きてお祈りをしなさい」「ふすまや障子の敷居は神聖な物なので絶対に踏んではいけない」「人生は試されることの連続である」という一貫性のない教えであった。一貫性のない教えが影響したのか、彼女はヤリマンであった。まとめますと、新興宗教にハマっているヤリマンでした。問題が多々ある女性ではあったが、人生で初めて出来た彼女をそう簡単に手放すわけにもいかず、浮気を黙認して付き合っていた。
しかし、彼女が海上自衛隊員と4Pをしていたことがバレた時、特に反省をする様子もなく「女は海を知っている男に弱いの」と私に言った言葉で、遂に私はキレてしまった。キレてはしまったが別れることはできなかったので、いつもはさせてくれない顔射をさせてもらうことで手打ちにすることにした。男にはどうしても顔射をしないといけない時があるのだ。嫌がりつつも私の精子をその顔でしっかりと受け止めた彼女は、空ろな目でしばらくぼんやりとした後「私……試されるのね……」とポツリと呟いた。顔射すら「宗教上の試練」と受け止める彼女への恐怖で、私はしばらく顔射が嫌いになった。
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『死にたい夜にかぎって』 もの悲しくもユーモア溢れる文体で実体験を綴る“野良の偉才”、己の辱を晒してついにデビュー! ![]() |
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