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「月給30万円の基本給は15万円!?」それでも摘発ゼロの“求人詐欺”に挑むPOSSE代表・今野晴貴

 今や労働問題研究の第一人者となった感のある今野によって、ブラック企業の問題にメスが入ったが、その後も、前述した“求人詐欺”、学生を正社員並みに働かせることで、学業に支障をきたす“ブラックバイト”と、労働問題が次々に噴出している。 「“ブラックバイト”は、ブラック企業が背景にある。ブラック企業は正社員に長時間、低賃金で働かせており、正社員が少しでも休みを取ろうとすると学生アルバイトにシワ寄せがいく。つまり、この種の会社は“ブラック企業”になるか、“ブラックバイト”を生むか、どちらかしかない。結局、“求人詐欺”や“ブラックバイト”、“ブラック企業”というのは個別の現象ではなく、日本型雇用の延長線上の問題なのです。だから、景気がよくなっても、なくなることはない。ただ、悪い会社だから懲らしめよう……という話に留まらない。  ブラック企業が蔓延り、増殖していくと、日本の産業は崩壊してしまう。若者が使い潰され、鬱病になったり身体を壊したりすれば、医療費負担は増えていく。労働力人口が減って、社会保障費が増えれば、当然、財政は悪化する。さらに、長時間労働と低賃金に苦しむ若者は結婚できず、少子化が加速する。この問題を放置すれば、日本という国が滅びてしまう。ブラック企業の存在は、若者だけでなく、誰にとってもいいことが何ひとつないのです」  今野はこの国の行く末を憂いて、日本の労働市場を変革しようとしているのだ。 「終身雇用など、日本型雇用の恩恵を受けていた年長世代は、こうした労働問題をなかなか理解できない……。だから僕らは、問題を事実として示して、社会問題化する。労働相談の当事者の多くは裁判など起こさず、泣き寝入りしているが、“事件”にすれば報道されるし、書くこともできる。敢えて“事件”化して、問題を可視化するのです。そのために、今後も“事件”をつくっていきますよ(笑)」  今野たちは、これまでの日本の労働運動にはない新しい手法で着々と成果を挙げている。そんな彼だが、現在、ターニングポイントを迎えていると明かした。 「3、4年前は、『ブラック企業』という言葉を使って、日本に労働問題が存在するというレベルから話を始めなければならなかったけれど、今は『日本全体がブラックなのでは?』と視点を移す段階にきている。問題のある特定の企業をただ『ブラック』と批判するだけでは、かえって本質を見失いかねない……。僕はこれまでブラック企業について問題提起をしてきたけれど、もともとやっていた日本の労働問題の研究、調査、政策提言に立ち戻るタイミングだと思っている。原点回帰ですね」  企業サイドが使う「日本型雇用」という言い回しは、日本固有の特殊な雇用形態(だから仕方ない)ということなのだろう。確かに、国内ではこの言い分は通用するかもしれないが、海外から見れば、日本という国自体が“ブラックネーション”ということになる。  ブラック企業は存在せず、労働問題はタチの悪い一部の企業の問題……今野が登場するまで、この国ではそういうことになっていた。荒地を拓き種を蒔くような、骨の折れる仕事を今野は続けてきたのだ。
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