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「月給30万円の基本給は15万円!?」それでも摘発ゼロの“求人詐欺”に挑むPOSSE代表・今野晴貴

「ここ2、3年は、“求人詐欺”の問題に取り組んでいます。給料や手当を実際より高く偽った求人で、企業が求職者を騙しても罰せられることはなく、野放し状態なんです……」
労働問題を可視化するために“事件”をつくる――POSSE代表・今野晴貴

『ブラックバイト 学生が危ない』(岩波新書)、『求人詐欺 内定後の落とし穴』(幻冬舎)の両著とも、実践家の今野氏らしく対処法や改善事例が豊富に綴られている

 年間2000件超の労働相談を行うNPO法人POSSE代表・今野晴貴はこう話した。 「典型的なケースは、月給30万円の求人を見て就職したら、基本給が15万円で残業代が15万円だったというもの。このように、求人する側の企業は嘘のつき放題ですが、実際、厚労省は一度も取り締まったことがない。特に、介護業界と保育業界は酷くて、求人内容と実際の給料が合っているほうが珍しいくらいです。これらの業界は給料が安いので、高いように偽らないと人が集まらないし、同業他社が“求人詐欺”で高待遇を謳っていれば、それと同じかそれ以上に嘘をつかなければならない……まるで詐欺合戦ですよ。エステ、外食、小売業界も似たようなことになっています」  求人募集の虚偽記載は職業安定法で禁じられているが、摘発はゼロ。ザル法なのだ。ところが2016年6月、厚労省が“求人詐欺”を行う企業に、懲役刑を含む罰則を検討していることが明らかになった。行政の変化の背景には、“求人詐欺”の実態を労働相談の現場から吸い上げ、調査、分析し、対策を申し入れてきたPOSSEの働きがあったのだ。  今野の名を世に知らしめたのは、2012年の著書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』だ。同著はベストセラーとなり、2013年には「ブラック企業」が新語・流行語大賞のトップ10に入った。もともとネットスラングだった「ブラック企業」という言葉に、今野は魂を注入したのだ。実証的なデータや現場から吸い上げた事例から、企業による従業員潰しの実態を炙り出した。どこか掴みどころのなかった「ブラック企業」は、今野によって初めて、獰猛で狡猾な姿を現した。 「違法だからブラック企業というわけじゃない。残業代を支払わない会社や離職率の高い中小企業はあるが、それは構造的な問題を抱えているからで、こうした企業は安易に従業員を辞めさせたりしない。これに対して、ブラック企業は人を使い潰す労務管理を戦略的に行う。初めから計算づくなんですよ」
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求人詐欺やブラックバイトなど、労働問題が次々に噴出
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