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「月給30万円の基本給は15万円!?」それでも摘発ゼロの“求人詐欺”に挑むPOSSE代表・今野晴貴

「息抜きは、建設的じゃないかもしれないけど、仲間や友人と酒を飲むことくらいかな(笑)。続けてこれたのは、現場でとにかく鍛えられたから。活動するなかで、価値観もガラリと変わっていきました。以前の僕は、正直、頭でっかちだったけど(苦笑)、現実に向き合うことで実践的になったと思う」  日本で労働問題界隈の人材は、研究者か活動家とタイプが二分されるように思える。だが、今野は研究者肌でありながら、実践家の顔を併せ持つユニークな存在だ。現場の人らしく、時には街に飛び出し、ハローワークの前で聞き取り調査なども行う。 「もともと、戦略を立てるのは得意。次にポイントになりそうなイシューに対して仕掛けていくわけです。例えば、『どんな理由で転職するのか』を調べたら面白い結果が出そうだな、と当たりをつけて、言論活動で興味深いピースになりそうなことを仕掛けたり、プロジェクトを立ち上げて人を巻き込んでいったり……まぁ、酒でも飲みながらね(笑)。『このテーマはまだ誰も調べてないから面白いぞ』と仲間を調査に誘うんです。面白いデータに突き当たって、それがメディアに報じられたりすれば、誘われた仲間にとって成功体験だし、僕もすごく楽しい。そんな話をしながら、仲間と酒を飲むのが大好きなんですよ(笑)。  結果がちゃんと出るから、活動が継続できているんでしょうね」  今野は息抜きの酒を「建設的じゃない」と自嘲的に話したが、酒席で仕事が生まれ、仲間のモチベーションも向上する……むしろ、建設的ではないか。  彼が代表を務めるPOSSEは、メンバーが若いNPOとして知られる。そして、人を巻き込む才に恵まれた今野の周りには、困窮者支援など他分野のNPO、コンサルタント、学者、弁護士、労組関係者……多種多様な人々が集まる。従来の労働運動はともすると世界が狭くなりがちだったが、今野は活動を通してさまざまな分野の人々と横断的に繋がっているのだ。ただ、特定のイデオロギーや政治勢力とは一定の距離を置くという。 「NPOとして、特定の政治勢力と結びつかないよう意識しています。ただ僕らは、現場に根差して社会をよくしていきたい。だから、すべての政党に開かれているべき。まぁ、自民党は話を聞きにこないけど、望まれればいくらでも話しますよ。労働問題って、すべてが現実問題。その意味では、僕は“現実主義”というイデオロギーかもしれない(笑)」  これまでにない社会運動を仕掛ける、実践家の次の一手に注目していきたい。 ※週刊SPA!上杉隆連載「革命前夜のトリスタたち」より 上杉隆(うえすぎ・たかし)●ミドルメディアカンパニー「NO BORDER」代表取締役。メディア・アナリスト。一般社団法人「日本ゴルフ改革会議」事務局長。『偽悪者 ~トリックスターが日本を変える~』(扶桑社)、新著『誰が「都政」を殺したか?』(SBクリエイティブ)が好評発売中。「ニューズ・オプエド」が好評放送中!
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