桐島ローランドが写真家に留まらない理由とは? キーワードは「デジタル・ディスラプション」
「この20年、写真はフィルムからデジタルに変わり、生き残るためには、スチールだけじゃなく映像も撮るのが当たり前。その次を考えたとき、3DやAR(拡張現実)、VR(仮想現実)に突き当たったんです」
近年のテクノロジーの激変を振り返るのは、写真家でマルチクリエイターの桐島ローランドだ。ファッション業界に地歩を固め、内外の有名モデルを撮影するだけでなく、多くの広告写真を手掛け、ミュージシャンのPVを制作するなど、その多彩な才能はジャンルの垣根を容易く跳び越える。
「器用貧乏なだけです(苦笑)」
そう謙遜する桐島が今、取り組んでいるのが、3次元の物体を複数のアングルから撮影し、得られた2次元情報を解析して3次元データに起こしていく最新技術――フォトグラメトリーだ。
彼が代表を務める日本初のフォトグラメトリー専用スタジオ「アバッタ」は、近未来的なフォルムのドーム状の撮影設備を擁する。ドームの至るところに取り付けられた100台以上の一眼レフカメラが、ドーム内の被写体をあらゆる角度から同時に撮影し、リアルな3次元データを構築するのだ。
「フォトグラメトリーは、CGやゲームで使われはじめているけど、例えば、自分の身体の3Dデータをもとに、仮縫いなしで、フルオーダーのスーツをつくることもできるし、図面がないような古い文化財の精緻なデータを得ることもできる。昨年には、ドローンを飛ばして小倉城をさまざまな角度からド撮影して、精密な3Dデータを作成しました」
VRゴーグルのオキュラスリフトやプレイステーションVRが発売された2016年は「VR元年」といわれるが、驚くことに、アバッタの立ち上げはこれを2年も先んじていた。
「3年前、元ソニー社長の出井伸之さんが、若い起業家を20人ほどシリコンバレーに連れていき視察する話があったんです。たまたま僕の友人も招待されていて、『暇だったら、行かない?』って誘われて、暇だったから行ってみた(笑)。僕は起業家じゃないけど、向こうのベンチャーを目の当たりにして、刺激を受けたし、フォトグラメトリーの存在を知ることになった。当時、すでに写真の業界は不景気で、2012年の参院選に出て落選したことで、カメラマンの仕事も減っていた。でも、くよくよしているくらいなら、フォトグラメトリーはカメラマンとして培ったノウハウを活かせるし、リスクはあるけど新しいことに挑戦してみるのも面白いかな、って」
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ