更新日:2017年11月14日 15:34
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「麦芽100%のビールがいちばん旨い」は本当か? ビジネスマンのための一目おかれる酒知識

ビールの味を決める麦芽とホップ

 副原料の話が長くなりましたが、基本的な原料の麦芽とホップについて、お話ししたいと思います。  麦芽はモルトともいい、麦芽100%のことを「オールモルト」と表現したりもします。麦芽とは、麦に芽を出させてから、乾燥させたものです。なぜ芽を出させるかというと、発芽するときにできる糖化酵素が、アルコール発酵に必要だからです。  アルコール発酵とは、糖が酵母によってアルコールと二酸化炭素に分解されることです。つまり、アルコールの原料は糖なのです。でも麦はデンプンですから、なんとかしてデンプンを糖に変える必要があります。そこで、麦が発芽するときにできる糖化酵素に活躍してもらうわけです。  ビールをつくるときは、まず麦芽を粉砕してお湯に投入し、酵素の働きやすい温度(だいたい50~70度)に保ちながら攪拌します。すると、甘い麦汁ができます。甘いといっても砂糖のような甘さではなく、優しい甘さです。  麦汁が出来上がったら煮沸釜に移すのですが、粉砕した麦芽がフィルターの役割をして、麦汁が漉されます。このとき一番初めに出てきた麦汁が一番麦汁で、キリンの「一番搾り」はこの麦汁だけを使っています。  ちなみに一番麦汁を漉したあと、上からシャワーをかけて出てきた麦汁が二番麦汁で、通常のビールはこれも使っています。私はキリンビールの工場で飲み比べたことがありますが、一番麦汁は二番麦汁よりコクと甘みが強く、明らかに味が違いました。  次に麦汁を煮沸して、ホップを投入します。  ホップはアサ科の蔓植物で、一年で8~9メートルにも成長し、夏に収穫されます。収穫するのは、毬花(まりはな)という花のような形をした房の部分で、ビールに使われるのは、その雌株にあるルプリンという黄色い粉です。  この粉が、ビールに香りと苦みを与えるのです。そのほか、泡持ちを良くしたり、雑菌を抑えてビールの腐敗を防いだりするのもホップの役目です。  ホップは粉のままですと扱いにくいので、圧縮してペレットという形で使用されるのが一般的です。ビールによっては、毬花を生のままや、乾燥させたり冷凍したりして使うこともあります。  ホップにはビールに苦みを与えるビターホップや、香りを与えるアロマホップなど種類があるので、煮沸した麦汁に投入するタイミングが重要です。苦みをつけるためには前半に、香り付けには後半に投入します。
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あとは酵母を投入
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