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なぜ特定の街で貧困が生まれるのか? “駅から徒歩7分以内か否か”で二極化する実態

 話を多摩ニュータウンに戻そう。この地域に36年住む田中明子さん(仮名・72歳)に話を伺った。 「ご近所さんは亡くなられる人も増えましたし、最近は別の棟で孤独死があったと聞きました。残ったお年寄りはみんな年金生活ですし、今さら出ていけない。ただ、ウチは4階ですがエレベーターがないから階段がツラくて……」
団地

団地は1棟あたり30戸だが、半分以上入っている棟はかなり少ない印象。ある棟では、生活の痕跡が見て取れる部屋は4戸だった

 続いて話を伺ったのは、商店街で買い物をしていた秋山正さん(仮名・36歳)。 「この団地で育ち、今は母親と二人暮らしです。緑は多いし団地内のスーパーで買い物もできるから生活しにくいってことはないんだけど、自分を含めリッチな人は住んでないですよね。新しく入ってくる家族もいますが、正直稼ぎが多そうには見えないし。言い方は悪いですが、新しい人はゴミ出しの仕方とかマナーが悪かったりね。あとはやっぱり建物が古いですよね。でも、建て替えはどうしても無理みたいで……」
多摩センター

団地内の一定区画ごとに商店街が存在。約20店舗が並ぶが、シャッターが開いているのは3分の1程度。人通りもまばらで活気らしいものはまるでない。高齢者のための福祉センターのみ増加中だそう

 話を聞いた住民たちにはどこか諦観さえ感じられたが、こうした地域は黙ってスラム化するのを待つしかないのだろうか? 「北海道の下川町は人口3000人ほどの田舎ですが、バイオマス発電事業で公共機関の電気代や灯油代を大幅に削減し、浮いた費用を子育て支援に回すことで転入者が増えています。周辺地域の地価が大暴落するなか、昨年ついに下川町だけが下げ止まったんです。同じように千葉県流山市も住民の高齢化の進む街でしたが、駅の構内に子供を保育園まで送迎してくれる施設を造るなど、子育てしやすい街をアピールすることで最近は総人口が右肩上がりの状態です」  自治体の方針で街の未来を変えることはできる。しかし、多くの地域は「地価の下落→低所得者の流入」という貧困のスパイラルから抜け出ることは困難なのだ。 【長嶋 修氏】 不動産コンサルタント。’67年生まれ。個人向け不動産コンサルを行うさくら事務所の代表取締役社長。近著『不動産格差』(日経プレミアシリーズ)が好評 ― [新型貧困を生む街]潜入ルポ ―
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