更新日:2022年11月25日 23:05
エンタメ

日本人のへヴィメタル蔑視を解消させた“歌謡メタル”が激動の1989年に残した爪あと

80年代後半のバンド・ブームの頂点「イカ天」

 1989年は音楽界でも、美空ひばりが死去し、一つの時代が終わりを告げた年であった。方や、80年代後半期は、バービーボーイズ、レベッカ、筋肉少女帯、爆風スランプ、プリンセス プリンセスほか、たくさんの国産ロック・バンドが台頭し、バンド・ブームが起こっていた。  そのブームを象徴するTV番組が、1989年に放送を開始した『三宅裕司のいかすバンド天国』である。「イカ天」と呼ばれ爆発的な人気を博したこの番組には、多くのアマチュアバンドが参加し、そこからFLYING KIDS、BEGIN、たま、JITTERIN’JINNなどがメジャー・デビューを果たした。  この時期TVをつけると、メジャー・シーンで活躍するバンドや「イカ天」出身バンドが頻繁に登場していた。また、この頃は工藤静香、Winkなどアイドル勢も百花繚乱で、メディアには次々と歌手・バンドが登場し、リスナーは忙しくこれらを消費していった。

X、SHOW-YA、浜田麻里、聖飢魔Ⅱのアルバムが続々チャートイン

 “歌謡メタル”と称すべき音楽性を持つバンド・アーティストたちのアルバムが日本の歌謡曲界に登場したのは、そんな激動の1989年だった。そのアルバムとは、X『BLUE BLOOD』、SHOW-YA『Outerlimits』、浜田麻里『Return to Myself』、聖飢魔II『WORST』の4枚である。  X『BLUE BLOOD』は、この年だけで60万枚を売り上げ、日本ゴールドディスク大賞など数々の賞を受賞した。同作から「紅」「ENDLESS RAIN」をシングルカットし、それぞれオリコン5位と3位を記録している。  SHOW-YA『Outerlimits』は、オリコンのアルバムチャート3位。同作収録のシングル「限界LOVERS」「私は嵐」は、それぞれオリコン13位と12位。どちらもCMに起用された楽曲だったため、当時は誰もが知っていた楽曲と言えよう。  “メタル・クィーン”浜田麻里のアルバム『Return to Myself』は、オリコンのアルバムチャート2週連続1位を獲得(ただし同作はヘヴィメタルではない)。CMに起用されたシングル「Return to Myself ~しない、しない、ナツ。」も1位を獲得している。  聖飢魔IIも、ベストアルバム『WORST』にて、日本のヘヴィメタル・バンドで史上初のオリコンのアルバムチャート1位獲得した。彼らは同年、まだ存在意義があったNHK紅白歌合戦に、ヘヴィメタル・バンドとして初の出演を果たしている。

B.D.10(1989)/09/21に発布された第六大教典で初のベスト・アルバム、聖飢魔II 『WORST~聖飢魔II極悪集大成教典』

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日本人のヘヴィメタル蔑視解消に貢献した“歌謡メタル”
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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本連載『ジャパメタの逆襲』が書籍化! 来春発売予定!

 さて、今回が今年最後の連載となる。9月から始まった本連載も何とか18回を数えることができた。おかげさまでご好評をいただいているようで、読者のみなさまにはたいへん感謝しています。

 来年は2月から開始予定です。この後、「アニメとアイドル臭漂うJAPプログレの世界」「BABYMETAL論」「X JAPANとV系」「ゼロ年代のヘビメタをネタとした作品」「ジャパメタのオムニバスアルバム」「ジャパニーズ・メタルのアルバム10選」ほかいくつかの題材を掲載しようと思っています。

 さらに、本連載『ジャパメタの逆襲』が来春、扶桑社新書から出版予定となりました。詳細は決まり次第、またご報告しますので、ぜひ、ご期待ください。

 それでは、みなさま、よいお年をお迎えください。来年もよろしくお願い申し上げます。


ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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