更新日:2022年12月14日 01:24
エンタメ

オタクとお茶の間がヘビメタに染められた2000年代――デトロイト・メタル・シティ、けいおん!、声優メタル

時代劇『メタル侍』と超人気アニメ『けいおん!』

 次は異色の時代劇『メタル侍』。ベタベタなお約束の時代劇だが、アメリカ人俳優ゲイリー・ジェイ・コフマン演じる着物を着た外国人の主人公、松平出州之進(ですのしん、あだ名は“出っさん”)が、クライマックスでヘヴィメタルの楽曲が鳴り響くなか、ヘアメタル系コスチュームに変身して、刀の代わりにギターを持って殺陣を披露するという展開だ。2008年にオリジナル・ビデオがリリースされ、2009年にBS11で放送された。  2009年から放送されたTVアニメ『けいおん!』でも、へヴィメタルがネタとして使用された。同作は、軽音楽部の女子生徒らが活躍する物語であり、4話にてヘヴィメタル調の楽曲「MADDY CANDY」と「HELL THE WORLD」が流れている。  これらの楽曲は、主人公らが通う桜が丘高校の吹奏楽部兼軽音楽部顧問の“さわちゃん先生”こと山中さわ子(声優は真田アサミ)が、同校在学時に組んでいたヘヴィメタルバンド「DEATH DEVIL」の持ち歌という設定。

人気アニメ「けいおん! 」のキャラクター、山中さわ子(CV:真田アサミ)が学生時代に組んでいたバンドDEATH DEVILの「Maddy Candy」(2009年)

 楽曲制作には、元アニメタル&VOLCANOの屍忌蛇(しいじゃ)<g>が参加し、シングル付属の解説文は、洋楽へヴィメタル月刊誌『BURRN!』(シンコーミュージック・エンタテインメント)編集部員の奥野高久が執筆している。筆者は、メタル専門店で見かけて購入した。このような人気萌え系アニメでアニメとメタルが融合していたことは、特筆すべき事例と言えよう。

声優業界にも広がるへヴィメタル

 ヘヴィメタルの波は、声優業界にも到来した。2010年に武道館公演を実現させたGRANRODEOは、2005年に声優&歌手の谷山紀章によって結成されたヘヴィメタル色の強いユニットだ。ライヴでのサポート・メンバーには、先述のFORTBRUGGや様式美メタル・バンドCONCERTO MOONの初代ドラマーだった長井“VAL”一郎、太田カツ<g>率いる同じく様式美メタル・バンドArk StormやBABYMETALサポート・バンドの瀧田イサム<b>など、北欧・様式美系ジャパメタ・バンドのメンバーが名を連ねている。

CONCERTO MOON、Ark Stormほか、90年代の冬の時代を支えた国産様式美系メタル・バンドのCD(筆者撮影)

“キタエリ”の愛称で親しまれている声優アーティストの喜多村英梨は、北欧メタルが好きなメタラーで、メロスピ系楽曲もやっているし、また人気声優の上坂すみれや大橋彩香は、へヴィメタル好きを公言している。
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日本のへヴィメタルは世界へ
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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