更新日:2022年12月30日 10:47
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『進撃の巨人』、BABYMETAL…オタク臭が漂う日本の「プログレメタル」

プログレッシヴメタルとは?

 プログレメタル(“プログレハード”“ハードプログレ”とも称される)とは、メタルのサブジャンルであり、プログレッシヴロックとヘヴィメタルのクロスオーヴァーによって形成される音楽でもある。  そもそもプログレッシヴロックは、実験的・前衛的なロックとして60年代後半期に英国で生まれた。世界的に有名なバンドとしては、ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエスなどが挙げられる。  リスナー(“プログレッシャー”と称される)は、濃いマニアが多く、筆者が洋楽メタルにドップリ浸かっていた90年代当時、レコード店のプログレ・コーナーには、生え際が後退している者を頻繁に見かけた。プログレッシヴロックにもっとも浸かっている客層は、今や50~60代の中高年だろう。  その後ヘヴィメタルが同じくイギリスで誕生し、プログレッシヴロックと融合して、プログレメタルが生まれる。80年代プログレメタル・バンドでは、QueensrÿcheとFates Warningが、その代表となるだろう。プログレメタルが本格的に支持を得るのは80年代末~90年代初頭頃であることから、客層は多少若く、40代が中核となっていると思われる。  近年、TVアニメ『進撃の巨人』以外で話題となった日本のプログレメタル楽曲に、BABYMETALの2ndアルバム『METAL RESISTANCE』(2016年)に収録されたテクニカルでカオスな楽曲「Tales of The Destinies」がある。本楽曲は、プログレメタルを代表する米国バンド=Dream Theaterへのオマージュである。このDream Theaterの2ndアルバム『Images & Words』(1992年)は、プログレメタルを代表するアルバムとされている。

プログレメタルを代表するバンド=Dream Theaterの2ndアルバム『Images & Words』(1992年)

日本のプログレメタルに多大な影響を与えたNOVELA

 プログレッシヴロックとプログレメタルは、パンクとメタルの険悪な関係とは違って良好な関係にあり、プログレメタルのバンドはそれなりに多い。そしてこのプログレメタルという音楽ジャンルは、日本にも早くから存在している。それが関西出身のNOVELAだ。  NOVELAには、現在で言うところのメロディックスピードメタル(メロスピ)のような楽曲が多く、ここから関西ヘヴィメタル・シーンは盛り上がっていった。彼らは音楽的にもルックス的にも耽美なイメージを持っており、のちのV系のルーツともされている(連載第6回参照)。  日本のプログレ・バンドの特徴として挙げられるのは、女性ヴォーカルが少なくなかったということだ。そのルーツは、寺山修司主宰の劇団「天井桟敷」に在籍していたカルメンマキによって結成されたバンド=カルメンマキ&OZの1975年のアルバム『カルメンマキ&OZ』だろう。

日本のロック史に巨大な足跡を残したカルメン・マキ&OZのデビュー・アルバム『カルメン・マキ&OZ』(1975年)

 もうちょっとハードロック/ヘヴィメタル寄りであれば、NOVELAのリーダー=平山照継のソロアルバム『ノイの城』(1983年)だろうか。シンフォニックかつファンタジックで、下町香織のヴォーカルは非常にアニソン臭が強い。  NOVELAは、Scheherazadeと山水館が合体したバンドであるが、Scheherazadeの大久保寿太郎<b>がStarlessを結成させて、1stアルバム『銀の翼』(1985年)を発表した。ヴォーカルは“ジュラ”こと宮本佳子。同作は、プログレハードでありながらも歌謡曲やアニソンに近い内容。ジャケット・イラストは、TVアニメ『タイムボカン』シリーズや、ゲームソフト『ファイナルファンタジー』シリーズでおなじみの天野喜孝である。  Starlessの後も、PAGEANT、MR.SIRIUS、MELL ROSE、MAGDALENAなど、80年代には多くの女性ヴォーカルのプログレ・バンドが登場し、90年代以降は、ROSALIA、PROVIDENCE、Marge Litch、ヴォーカルレスの女性メンバーで構成されるARS NOVAなどが活躍した。
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オタク臭漂う女性ヴォーカル・プログレ
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(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)

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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  長らくジャパニーズメタルは、洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 国内では無視され、メタル・カーストでも最下層に押し込められてきた。メディアでは語られてこなかった暗黒の時代から現在の世界的ブームまでを論じる、初のジャパメタ文化論。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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