山田ゴメスの俺の恋を笑うな
吾輩はネコである
上野に古びた一軒のポルノ映画館がある。
そこは、知る人ぞ知る、ゲイのハッテンバだ。
しかも、どちらかと言えば年輩専門であるようで、新しい出会いへの期待に胸を膨らませる
オールドゲイたちが、おのおのに恋のかけ引きを楽しんでいる。
館内の様子はこんな風だ。
スクリーンには、普通に男と女がまぐわるポルノフィルムが流れている。
それに目を向けている人もいれば、目もくれない人もいる。
目を向けている人たちは、誰もがうわのそらだ。
物色やナンパ待ちに余念ないのが見て取れる。
目もくれない人たちの振る舞いは、一言で表現すると奔放だ。
ある人はとなりに座ってる人の怒張した股間を捏ねくり回し、ある人はとなりに座っている人のセーターを捲り、乳首を吸っている。
うしろを見れば、立見席の右端側で、一人の中年のおじさんが四人の初老のおじさんたちに
輪姦されて恍惚な表情を浮かべている。
中年のおじさんの尻に初老のおじさんたちの腰が代わる代わる密着し、激しいピストン運動を繰り返す。この場所で挿入まで済ましてしまう目論見のようだ。
まるで漫画喫茶をラブホ代わりに使う若者ではないか。
一人、二人、三人……と、果てていく初老のおじさんたちが、抜群のコンビネーションで、またペッティング役に回る。
そして、事を終えた三人めの初老のおじさんが、ズボンのチャックを閉めながら、最後に残った初老のおじさんの肩をポンとたたく。
「アンタの番だよ」
と言わんばかりに、ズボンを半ずらしにして剥き出しになった中年のおじさんの尻のほうへと目配せをしている。
しかし、最後の初老のおじさんは、驚くことにその誘いを毅然とした態度で断ったのだった。
「吾輩はネコである!」
おあとがよろしいようで……。
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