はじめてのピッチャー

──今日のヒーローインタビューは、敵チームの強力打線を、2回2失点ながらノーヒットという見事なピッチングで押さえ、今期初の1勝目を挙げた護牝投手です。

護牝(はにかみながらも片手を軽くあげて大歓声に応える)

──ナイスピッチングでした!

護牝 あ、ありがとうございます……。

──今回は、このチームでの初登板ということで?

護牝 いや、このチームどころか、人生初のマウンドです。

──そーなんですか!?

護牝 いや……、小学校の頃、三角ベースの手打ち野球でなら二度ほど投げたこともあるんすけど。あのときは味方チームも僕を含めて3人しかいませんでしたし……。正確には、ダイヤモンドベースの野球では人生初ってことっすね。

──OH! なんてメモリアルな!! 登板前はさぞかし緊張したことでしょう?

護牝 はい。試合開始3分前に先発を監督から告げられたときは、「ぜってーウソだろ!」と、買ったばかりのファーストミットでキャッチボールをしてました。

──ところが、それはウソじゃなかった、と?

護牝 そーなんですよー。どうやら本気っぽいので、残りの約2分くらいで急いで肩をつくりました。

──マウンドにあがったときのお気持ちは?

護牝 もう頭の中が真っ白で。でも、トップバッターで、どうやって打ち取ったかはおぼえてないのですが、とにかくワンナイトを取ることができて、ちょっとだけ気分が落ち着きました。

──「ワンナイト」ではなく「ワンナウト」ですね?

護牝 そうです。「ワンナイト」ではなく「ワンナウト」です。どうもすみません。ワンナイト取っちゃったら二丁目のゲイみたいですもんね。僕、よくノンケの人には「ゲイっぽい」って言われるんですけど、モノホンのそのスジの人には「絶対にゴメスは筋金入りの女好きよね」って言われますから。やっぱり、わかる人にはわかるっていうか……。

──性癖についてはどうでもいいです。途中、5つのフォアボールなどで危ないシーンもありましたが?

護牝 結果的に2点取られちゃいましたしね。なるべくフォアボールは出さないように頑張ったつもりなんですが。「ストライクを打たれるのは全然OK!」って自分に言い聞かせながら投げてたんですけどね。一球だけスローカーブを投げてみたんですが、きわどいコースでボールになっちゃって……そこからはもう、カーブは怖くて投げることができませんでした。でも、「初体験だからしょうがないわよね(ハートマーク)」と途中から開き直って、とにかくポールでもイイからテンポ良く投げることを心掛けました。

──「ポール」ではなく「ボール」ですね?

護牝 そうです。「ポール」ではなく「ボール」です。ちなみに僕は、どちらかと言えば、ポール派ではなくレノン派です。

──なんでポールはファーストネームでレノンはファミリーネームなんですか?

護牝 いや、ジョンだとビートルズの話をしてるってことが皆さんに伝わりづらいのでは、と思って……。

──そんな余計な心遣いはしなくていいです。ところで、今日のピッチングのポイントは?

護牝 やはり2回に左バッターが打った強烈なライナーをファーストが見事にさばいてくれてのダブルプレイ、ではないでしょうか? あれがなければ、1勝どころか、おそらく一生トラウマに残ってしまうほどの精神的ダメージを受けるくらい、ボロボロに崩れちゃっていたような気がします。

──さりげなく「1勝」と「一生」がダジャレになってますね?

護牝 まったく気づいていませんでした。いや、マジ偶然ですから!(紅潮。かなりムキな口調で)

──2回は「フォアボールを一回出したら交代」と宣言してマウンドに上がったにもかかわらず、いきなりのフォアボール後、続投を?

護牝 やはり、本名が「勝也」なもんで、こういう場面ではつい、負けん気が出てしまって……。「名は体を表す」ってやつですか?

──「ゴメス」は本名じゃないんですか?

護牝 ゴメスってのは本来、名字なんですよ。だから、本名だったら「山田田中」みたいなもんですから。ちなみに、帰化用(ペン)ネームの「護牝」は「メスを守る」という意味合いを込めてみました。

──どうでもいいミニ知識ですね。あと、一塁ランナーへの牽制球は、ワンバウンドしちゃって、とても中途半端でした。

護牝 一度、牽制ってやつをやってみたかったんですよ。でも、プレートの外し方がよくわからなくて……。そもそもセットポジション自体がよくわからないんですよ。1回の攻撃の最中、あわててチームメイトに教えてもらいました。

──ピッチング練習は、ずっとやっていたのですか?

護牝 はい。試合が終わるごとに、最後の残り時間を利用して、独りで黙々、壁に向かって投げていました。あと、夜中にマンションの横にある駐車場の壁にガムテープで印をつけて、そこに向かって投げていました。

──まるで谷口クンですね?

護牝 いや、どちらかと言えば、イガラシが入部してきて、レギュラーを外されてしまいながらも、陰でこっそり練習していた丸井のイメージで……。

──はあ……、じゃあ丸井ってことで。そろそろ時間もなくなってきましたので、これからの護牝選手のピッチングの課題を教えてもらいたいのですが?

護牝 とりあえずセットポジションを完全に把握することと守備ですかね。今回は幸いにも機会がなかったのですが、ファーストゴロのときのカバーやバントシフトとかになったら、もうてんやわんやですから。あと、置きにいかない、腕を思いっきし振ったボールも意識的に投げれるようにして、それが結果的にチェンジアップ効果につながれば、と。あと、できればもう1種類、なんでもいいから変化球が投げれるようにしたいですね。最終的には左殺しのワンポイント要員を目指したいです。

──なるほど。それでは最後に一言、日本語でお願いします!

護牝 神サマハ、ワタシノ味方デース!

──ありがとうございましたー? 護牝選手でした! 

PROFILE

山田ゴメス
山田ゴメス
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
OL、学生、フリーター、キャバ嬢……1000人以上のナマの声からあぶり出された、オヤジらしく「モテる」話し方のマナーとコツを教えます

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