渡辺浩弐の日々是コージ中
第511回
5月20日「アニメの中心とは」
・台湾の全力出版・林依俐社長からお誘いを頂き、台湾経由で、林さんそしてイラストレーター・VOFANさん、そしてコスプレイヤーのチョコさんと合流して、シカゴ入り。この地で開催されている日本アニメのイベント「アニメ・セントラル」に参加している。
・VOFANさんは今回このイベント内の特設ブースで作品展示会を行っていて、サイン会は長蛇の列だ。台湾~日本でのブレイクを経て今アメリカでの人気も獲得しているVOFANさんに今どのような風景が見えているか。日本を含むアジアの若いクリエーターに今どのようなチャンスが現れているのか。など、どこかで改めて書きたいと思う。
・会場には全米から約3万人のアニメオタクが集まっている。日本のアニメはアメリカでは文字通りサブカルチャーの位置づけのまま(なにしろハリウッドをはじめメインを張るカルチャーがでんと存在している国だ)急成長しているジャンルだ。そこに集う人々の熱気や高揚感から、日本の、ちょっと前の光景がフラッシュバックするものがあって「ああ、これこれこんな感じ!」と叫びそうになる。
第510回
5月13日「20年後コンピュータが夢魔になる」
・日本人はあと10年~20年のうちに生殖形態を一変させる必要がある。急がなくては少子化は加速し、国家は崩壊する。
・まず恋愛というものが架空の相手と行うものになることを、きちんと受け入れていかなくてはならない。日本ではオタクマーケットにおいてその状況が十二分にシミュレートされていたことは幸運だ。ゲームやアイドルのマニアは、そしてバーチャルYouTuberのリスナーやラブドールのオーナーは、新時代を先取りし、準備していた先駆者だったのだ。
・恋愛対象はゲームやアニメから飛びだして、日常生活に入り込んでいく。例えばスマホの秘書アプリがリアルなバーチャルキャラクターになる。例えばAIスピーカーが可動式の美少女フィギュアとなる。抱き枕あるいはラブドールにヒューマノイドロボット技術が導入される。
・ハードウェアより大事なのはソフトウェアで、肝心なのはその恋愛対象の容姿や声や性格だ。そのデザイニングについてはゲーム業界やアイドル業界が、というかオタク層が数十年にわたって培ってきたノウハウが活かされる。最初は既存のキャラクターや実在のアイドルからスキャンされる(容姿だけでなく、思考ルーチンについても)だろうが、もちろんユーザーがカスタマイズすることもできる。
・もちろん人間相手の恋愛も残るだろうが、それも、肉体的に出会って行うケースは極端に少なくなるだろう。バーチャル空間で出会い、愛をはぐぐむ。その際、自分の姿は、好きにデザインすることができる。もちろん相手の姿を、自分の好きな形に調整することもできるわけだ。
・つまり、全ての人が自分にとっての理想の相手と恋愛し、結婚できるようになるということだ。物理的な性行為はVRマシンやセクサロイドの上で営まれるようになるが、この時、利用者からは精子や卵子が……DNAが採取されることになる。マシン内部のカプセルに一時保管された後、定期便によって回収され、遺伝子情報とともにDNAバンクに保管される。
・DNAバンクのコンピュータ内ではたえず遺伝子マッチングのシミュレーションが行われ、スーパーな組み合わせが見つかると「カタログ」に掲載されることになる。
・つまり、子作りはまた別のライン上で行われるものになるわけだ。子供がほしくなった人はこのコンピュータに希望の条件を入力する。100メートル9秒台で走るアスリートでも、知能指数200オーバーの天才でもいい。絶対音感や9等身や超長寿といった要素を追加してみてもいいだろう。全ての条件を満たした人間が、カタログから検索されて表示される。気に入ったら購入して、人工受精そして人工子宮への着床をオーダーする。
・以上かなりはしょって書いてしまいましたが、つまりですね、今後、VRマシンが人々の性欲を吸収する。だけではなく、生殖活動までをサポートするということを言っときたいのです。
・夢魔の伝説がある。悪魔は男性に会う時はサキュバスつまり理想の美女の姿となり精子を奪取する。そして選ばれし女性のもとに理想の美男インキュバスの姿で訪れ精子を注ぎ妊娠させる。何をやっているかというと、DNAのマッチングを愚かな人間の愚かな恋愛にゆだねずに悪魔の知恵によって行い、スーパーベビーを作ろうとしているのだ。
・それぞれの理想の姿を擬して誘惑する機能、そして理想のマッチングを決めて遠隔の男女を使って子作りをさせる機能。今のVRとネットワークのテクノロジーによって実現されうるものだ。つまりコンピュータが、新時代のサキュバス・インキュバスになっていくと考えるべきなのだ。 ※参考→「少女再生装置」
第509回
5月6日「ゲーム実況を地上波でやるとつまらなくなる?」
・「無名の素人がやってるゲーム実況が100万再生とかいくらしい。じゃあ有名なタレント使ってやってみれば100億再生じゃないか!」的な企画書でスポンサーつけて作られたテレビ番組が次々と失敗しまくった時期があった。ゲーム実況はネットで生まれ、育った文化だ。マーケットとしても巨大なものになったが、そのまま一方向のマスメディアに持ってくるのはうまくない。というか、持ってくる意味がない。そこでコツがいるのだ。
・「じゃあそのコツを教えてよ」と言われて一生懸命話すこともあるが、そういうこと言う人に限ってゲーム実況をぜんぜん見てなかったりするので、話が通じない。ネットにはネットの、テレビにはテレビのやり方がある。そこを理解しようとせずただ収穫だけをしようとしてるのなら、うまくいくはずがない。
・「マスメディアの中で輝くタレント性と、ネットメディアで好まれるタレント性」の違いについて前に少し書いた。YouTuberやゲーム実況者として人気が出ている人達に共通している個性とは、「一緒の部屋にいても不快でない人柄」だ。
・ネット番組は、映画やテレビのように別世界を外部から観賞する感じではなく、同じ部屋でゲームやったり雑談やったりする感じで視聴するものだから、直接的に生理感覚に触れてくる。視聴者としてはそのタレントを、自分の動物的な「なわばり」に迎え入れることになるわけだ。格好よかったり面白かったりする人でも、旅行で一緒の部屋に泊まってくださいと言われると「ちょっとなあ」となるタイプ、わかるでしょう。逆にそんなに魅力的とは思えないけど同じ部屋にいて安らげる人って、いるものだ。
・そしてネットでエスタブリッシュされた人気者は、テレビに出るために芸風をテレビに合わせるメリットがないことは、テレビ側の人は知っておいた方がいい。ネットで、自分で勝手にやってれば十分稼げるのである。