月収9000円、カンボジアのスラムでアパート経営する一橋大卒の72歳~日本を棄てた日本人~
“海外で暮らす日本人”をテーマにしたテレビなどのメディアがブームになって久しい。そのほとんどが苦労の末になにかを成し遂げた人、まさにお涙頂戴の美談である。だが実際には、海外で暮らす日本人のなかに月収1万円程度という厳しい状況のなかで生活をしている人も数多くいるのだ。
今回ご紹介するのはカンボジアのスラムでアパート経営をするF原さん(仮名・72歳)。カンボジア在住歴は10年以上だが、パスポートはとうの昔に紛失したという。
果たして、彼はどのような人生を辿り、なぜそこで暮らしているのか……。
⇒【写真】はコチラ(F原さんの住処) https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1318598
カンボジア・プノンペンの郊外にあるステミェンチャイ地区。かつてこの薄汚れた町の中心に、首都圏のゴミが一極集中する超広大集積場があった。
かなたに連なるゴミ山脈。自然発火したゴミの煙で周辺はもやに包まれ、無数の蝿が群れを成す「地球最後の日」みたいな光景がリアルに広がっていたが、10年ほど前、大人の事情でゴミ捨て場はさらなる僻地に移転。跡地には土砂が盛られ、忘れられた土地として放置されたままになっている。
何千・何万トンというゴミエキスで汚染された集積場の周りには、今もスラムが点在。プノンペン市民の間でも“貧困ゾーン”として悪名高いエリアだが、そんなスラムのど真ん中に、一流大学卒の日本人(?)がオーナーという、世界最安のオンボロアパートがあることはほとんど知られていない。
「おい、うるせえんだよ……。こんな夜中に騒ぐんなら出てってもらうぞッ!」
夜9時にこんな夜中もないものだが、老人は常に早寝早起き。アパートの主であるF原さんはプライドが高く、店子には高圧的だ。なにせ、一橋大学卒の元数学者。高度成長期にプログラミングを学び、IT技術者の草分けとして一部上場企業にヘッドハンティングされるも、人付き合いが大の苦手。持ち前の偏屈な性格もあって、大した出世もできないまま定年を迎えた。
再就職先では厄介者扱い、家庭では妻や子とそりが合わず居場所がない。そんなF原さんが行き着いたのは、JICA(国際協力機構)の「シニア海外ボランティア制度」だった。
元気が有り余った経験豊富な爺さん、婆さんを辺境国に派遣する制度だが、往復の旅費や家賃はもとより、現地での生活費や海外派遣中の国内手当まで支給されるという至れりつくせりのオイシイ仕事である。
熾烈な競争を勝ち抜き、単身カンボジアに派遣されたF原さんは、熱帯特有のゆったり流れる時間と開放感に酔いしれ、日を追うごとにアジアの虜となった。
もともと家族への想いは薄い。スーパーコンピューター並みに決断が早いF原さんは、JICAが借り上げた高級アパートから一泊数百円の木賃宿に移り住むと、家賃の差額をコツコツ貯金。ギリギリのケチケチ生活で小金を貯め、任期満了直後、いきなり失踪した。
残された日本の家族が捜索願を出したのか、出さなかったのか定かではない。日本のパスポートを文字通り「棄てた」F原さんは、40代のカンボジア女性と見合い結婚(内縁)すると、有り金を叩き、冒頭で紹介したゴミ捨て場のふもとに小さな土地を買った。
空き地の片隅にテントを張り、奥さんとふたり、コツコツとセメントをこね、壁を塗り、小さな家を建て、数年後、バブル最高期にその家を叩き売り、同じスラムに賃貸用の長屋を購入。アパートオーナーとなった。
日本を棄てた日本人、なぜ? ~カンボジアのスラムでアパート経営するF原さん(仮名・72歳)の場合~
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