日本人は「自分でお釣りを数える癖」をつけた方がいい
― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
千円ちょっとの買物をして一万円だしたとするでしょう。最近はレジの店員さんは、たいてい目の前で、お釣りのお札をお客さんに見せながら数えますね。「ご確認下さい。千円、二千円、三千円……」と、カウントしながらこっちに示しますね。
そのたびに、僕は内心「それはどうなんだろう」と困っているのです。
どういうことかと言うとね、目の前でお札を数えながら、受け取ってみると一枚足りなかった、という手品みたいな技をやられたことが、パリとナイジェリアであります。
ナイジェリアが最初です。もう何年も前ですが、露店でお土産を買った時です。三十代と思える男性が目の前で十ドル札を数えました。その数え方がなんだかおかしいとふと思ったのです。
男は左手にタバコの箱とお札を持ち、右手でお札を一枚一枚数えました。数え終わって、僕にそのお札の束を右手で渡しました。
お札を受け取った僕は、反射的にタバコの箱を彼の手からひょいと取り上げました。いきなりだったので、相手も虚を衝かれたようで、簡単にタバコの箱は取れました。
すると、彼の左のてのひら、タバコの箱の下には、十ドル札が一枚、隠れていたのです。
僕は、「オッオウ!」なんて軽く言って、渡されたお札を数えました。案の定、一枚足りませんでした。その男は、数えながら、見事な技で一枚、抜き取って、タバコの下に隠していたのです。男は苦笑いして、その一枚を渡してそれで終りでした。
二回目はパリです。大衆的な飲み屋さんでした。お札を数える、四十代の男性の動きに、一瞬、「ん?」と思いました。が、その時は、ワインなんぞを飲んでいて、なおかつ、相手はタバコの箱みたいな隠すものを持ってなかったので、まあいいかと思ったのです。店を出て、少し歩き「いやいや、待てよ」ポケットから取り出すと、見事に10フラン札が(まだ、ユーロになる前です)一枚、足りませんでした。
なにか変な感じは当たっていたのです。ただし、ナイジェリアの男よりは技術があきらかに上でした。

1
2
『ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)』 『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。 ![]() |
記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】
「俺のタバコの銘柄を覚えろ」コンビニのレジで横柄な態度のヤンキーに常連客のおじさんが平手打ち。思わぬ展開に…
コンビニのトイレを“無断で長時間占領”する女性3人組に店員が激怒「しかも何も買わずに帰る」
「謝って済むなら警察はいらない」コンビニで“カスハラ”した作業服の男性が我に返って土下座したワケ
「長時間コンビニに居座る高校生カップル」にうんざり。「男女兼用トイレ」にこもる二人に店長が注意した結果…
「レジの下に外国人スタッフが寝ていた」コンビニの派遣バイトの実情。深夜帯は“いきなりワンオペ”の場合も
ウォッカと謎の錠剤を「コレあげる~♡」。昏睡強盗パブに記者が潜入、潰れた白人客が連れ去られた先は…
日本初のタワマンに住む70代は「一生モノの買い物と思ったのに…」。各地で“老朽化”が進むタワマンに住民が悲鳴
外国人観光客が日本で“ぼったくり”被害に。SNSで「避けるべき観光地」と悪名高いのは
「長期的に少しずつぼったくる」オタクに優しくなくなった秋葉原の今。コンカフェで“年収2000万円”稼ぐキャストも
「金のネックレスを売っているお店に連れていき…」歌舞伎町で増加する“新たなぼったくりの手口”
「俺と二人で旅がしたいの?」――46歳のバツイチおじさんは男前すぎるセリフを真顔で言い放った〈第27話〉
「よかったら一緒に観光しない?」――46歳のバツイチおじさんは国連に勤める才女から突然デートに誘われた〈第26話〉
「街の匂いもメシの味も何もかも合わない」――46歳のバツイチおじさんはスリランカに来たことを激しく後悔した〈第25話〉
インドで出会った愉快な詐欺師たち――雑すぎ、目的が見えない、そもそも騙す気がない!?
美しすぎるタイ・バンコクの安宿オーナーを直撃「お見送りの言葉は『さようなら』じゃなくて『いってらっしゃい』」
一口も食べないまま電車へ…“駅そば店員”が遭遇した迷惑客。実は「冷やし=早い」は誤解?
「もうラスト1点なんです」は意外と嘘じゃない。アパレル店員の本音と建前
ユニクロに返品された商品はどうなる? 再販売か廃棄か…広報に聞いてみた
「行ってはいけないキャバクラ」の8つの特徴、底辺キャバ嬢が伝授
悪質クレーマーの多くは“かまってちゃん”。どう対応するのがベスト?
韓国には「法を守る=弱い人」といった考えがある?G8加入に固執する理由も
33歳ホステスの悩み「彼氏が焼きもちをやいて大変」辞めるしかない?
インド人は全員悪人!? 旅人の定説を検証してみた
中国がどうやら景気がいいらしい!? 若者だらけで急成長する「中国のシリコンバレー・深圳」
中国のコンビニで牛乳買ったら腐ってた…製造日から3日しか経っていないのに
日本人の大半がウクライナ侵略を「予測できなかった」理由が絶望的だった
世界幸福度ランキングで日本は56位。日本人が不幸を感じやすい理由
“世間”が中途半端に壊れた今、生き延びるために必要なこととは/鴻上尚史
海外のスリ師&ぼったくり店「日本人観光客は狙いやすい」理由って?
日本語の悪口「ブス・デブ・ババア…」は世界基準では許されないことにハッとした/鴻上尚史
この記者は、他にもこんな記事を書いています